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椿屋四重奏を解散した中田裕二が、ソロ・アーティストして初めてROCK IN JAPAN FES.に登場する。ステージ上に準備されているのは、パーカッションと、2脚の椅子と2台のギター。今回のステージは、アコースティック編成でのライヴだ。

「久々に帰ってまいりました、中田裕二でございます。今日は他のみなさんはロックな感じでやっていますが、僕は全力でまったりさせにやってきました。“ファンキーソウルアコースティック”な感じでいきたいと思います」

その言葉で演奏されたのは、昨年リリースされたアルバム『ecole de romantisme』の“ベール”。ゆったりと刻まれるパーカッションに情熱的なギターのカッティングが冴え、そこに艶やかなヴォーカルがのる。彼の傍らでこちらもテクニカルなギター・プレイを魅せているのは元BEAT CRUSADERSのカトウタロウ。パーカッションは朝倉真司。コーラスの役割も果たし、ギター、歌ともに美しいハーモニーを生みだしている。涼しい風が吹いてくる夕暮れの時間、パープルの照明に照らされて、大人の色気を滲ませるシックなアンサンブルが心地いい。

「今日は久々の夏フェスなので体をほぐしておこうかなと思いまして、今人気のカービーダンスを朝からやってきましたよ(笑)。あれが結構ハードで、ちょっとバテちゃったんですよね、正直」。なんてこと言うから、観客から「やってみて!」の声が上がる。「言ったあんたが悪いよ」とカトウに突っ込まれて、苦笑しつつ、やってみせてくれる。本当にリラックス・ムードのライヴだ。椿屋四重奏では、毒と色気をたっぷりしみ込ませた最高に刺々しくて、最高にロマンティックなロックに身を捧げ、グラマラスに歌を歌いあげてきた中田裕二。ここでは、ラフな姿でさらりと歌を口ずさんでいるが、でもそのラフさがまた、歌に色味を加えていて、しなやかでセクシーだ。

「次はバラードを。もうすぐアルバムが出るんですけど、そのなかからひじょうに女々しい曲、“ノスタルジア”を聴いて下さい」

続く“バルコニー”とともに、ゆったりとしたリズムが、心地好い風を運んでくる。RIJF公式パンフレットに「今年はさわやか路線で…」と自ら綴っているのを見て、思わず笑ってしまったけれど、そのとおりのさわやかで居心地のいい空間が、ここに出来上がっていた。

ラストは再び9月リリースの新作『MY LITTLE IMPERIAL』からとなる“DANCE IN FLAMES”。DANCE、の言葉どおりのアッパー・チューンで勢いよくスタートしたものの、ちょっとミスって仕切り直し。「こんな日もあるよね、なかったことで(笑)」と、くしゃっとした笑顔で、改めて先ほどよりもアッパーに、キレッキレのギター・プレイで観客を踊らせる。新しい魅力で観客をKOした中田裕二は、ソロとして初のRIJFのステージをあとにした。(吉羽さおり)