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「今年1年間で溜まりに溜まった垢を落とすような気持ちで歌いたいと思います」と宣言してライブをスタートさせた清 竜人。1曲目は“ワールド”。≪ぼくひとり わたしひとり≫というスモーキーな歌声が放たれた瞬間、すべての垢や厄を洗い流してくれんばかりに清涼感あふれる空気がMOON STAGEを包み込んでいく。さらに“悲システム”では赤々としたライトの下で不穏なグルーヴを走らせ、“ぼくらはつながってるんだな”ではファンキーなアンサンブルをスウィングさせ……と、1曲ごとに全く異なる情景をくっきりとした輪郭で描き出していく。この多彩で濃密なアンサンブルは、ソングライティングの素晴らしさは勿論のこと、山本タカシ(G)、TOKIE(B)、Asa-Chang(Dr)という磐石のメンバーで構成されるバンドあってのことだ。中でも圧巻だったのは、“プリーズリピートアフターミー”。驚くほどシリアスな言葉を綴っているにもかかわらず、アコースティックやピアノが重層的に絡み合うサウンドに乗って奔放に伸びていく歌声は、神々しいほどのエモーションを立ち上らせていた。「業務連絡です」として本日深夜から予約が開始されるワンマンライブの告知をたどたどしく読み上げた後は、キーボードの前に腰かけて“ジョン・L・フライの嘘”をファンキーにプレイ。さらに己の弱さやエゴを曝け出した“痛いよ”を熱唱して本編終了。温かな拍手で迎えられたアンコールでは“ウェンディ”をしっとりと歌い上げ、身じろぎもせず聴き入るオーディエンスで満たされたフロアを幻想的な空気で包み込んでステージを終えた。
「それではよいお年を」と言って逃げるようにステージを後にする姿は、デビュー当時とまったくたたずまいが変わらない。しかし、聴き手の心をぐいぐいと惹き込んでいくその歌は、確実にスケールを増して多くの聴き手を捉えはじめていることを感じさせ至福の40分だった。(齋藤美穂)