【コラム】名曲しかないKinKi Kidsのバラードベストは、まるでふたりの心の結びつきを映す鏡だ

【コラム】名曲しかないKinKi Kidsのバラードベストは、まるでふたりの心の結びつきを映す鏡だ

デビュー20周年を記念して、KinKi Kidsの珠玉のバラード曲だけを集めた『Ballad Selection』が先日発売された。もちろんバラードだけのベストアルバムのリリースは初で、彼らの20年の歴史の中にある、様々な時代のバラードがセレクトされている。こうして並んだ楽曲を眺めていると、KinKi Kidsにとって、大切なメッセージを伝えたい節目のタイミングや、アニバーサリー的なリリースでは、ミドル〜スローテンポの楽曲をレコーディングすることが多かったのだなと改めて気づかされる。中でも、自分たちで作詩・作曲を手掛けたバラード曲には、やはり特別な思いがこもっているような気がして、じっくりと聴き入ってしまう。全曲リマスタリングが施され、ナチュラルに耳にすべりこんでくるように、ふたりの歌声を堪能することができ、曲順もあえてリリース順の時系列ではなく、また新鮮な気持ちでひとつのアルバム作品として楽しむことができるのもいい。

このアニバーサリーイヤーに自ら軌跡を振り返り、その足跡をひとつずつ誇らしげに掲げたようなこのアルバムは、ファンならずともぐっとくる名曲が並ぶ。この『Ballad Selection』自体がそうした記念碑的な性質を持つものであるのと同時に、収められた1曲1曲、それぞれ単体がすでにモニュメンタルなものであったことを再確認させてくれるのだ。そう、ただ単にスローで美しいメロディの歌を集めたというだけのものでないことは、セレクトされた曲の並びを見るだけで理解できるはず。どの曲もKinKi Kidsにとって大切な思いや、その時に伝えておきたい気持ちを歌ったものであり、自分たちの思いをくっきりと刻みつけていくために必要な歌であったことがよくわかる。

まず“愛のかたまり (M album Ver.)”を1曲目に収録したことを考えても、堂本光一と堂本剛が、KinKi Kidsというユニットにどれほど強い思いを抱いているかが理解できる。ファンにとってはもはや説明不要の名曲だと思うが、この楽曲は剛作詩、光一作曲で、もともとは13枚目のシングル『Hey! みんな元気かい?』に収録されたカップリング曲だった。女性目線で書かれた歌詞が切なく、とても美しいメロディを持つこのラブソングは、ファンの間で非常に高い人気を誇る楽曲で、その後、『F album』に収録される際には、アコースティックバージョンとしてリアレンジされている(今回のアルバムに収録されているのは、さらにその後『M album』の通常盤に収録されたバージョン)。男女の恋愛を歌うラブソングでありながら、どこか無防備で不器用でピュアな信頼関係を描く歌は、そのまま彼らの絆を思わせるものでもあった。本人たちにとっても、ファンにとっても思い入れの強いこの歌こそ、トップを飾るにふさわしい楽曲だと思う。そして、KinKi Kidsのシンガーとしての実力をまざまざと見せつける、玉置浩二の手による“むくのはね”や、今も変わらぬ瑞々しさを放つ“青の時代”、松本隆作詩の“薄荷キャンディー”など、様々な時代から、KinKi Kidsを彩ってきた名曲たちが続く。特に“青の時代”は、すべてのパートをふたりが一緒に歌った珍しい曲でもあり、初期の眩しい青さが2017年の今、またフレッシュに蘇る。

シングルリリースの大きな節目に、重要なバラード曲があったことを再確認する意味でも、このアルバムの意義は大きい。彼らがセルフプロデュースを打ち出すようになった10thシングル曲“もう君以外愛せない”、織田哲郎作曲の20thシングル曲“Anniversary”、そして何より2010年リリースの30thシングル“Family 〜ひとつになること”は、“愛のかたまり”同様、剛作詩、光一作曲の楽曲であり、これは自らの言葉でKinKi Kidsの絆を描いたかのような、非常に感動的な作品だった。《疑わず疑いもせずに歌えるよ》という歌詞に、ふたりの間を確実につなぐ、それこそ家族以上の結びつきを感じるのだ。そんな、ふたりにだけわかる、ふたりだけがわかっていればいいという絆は、2007年にリリースされたアルバム『Φ』収録の“銀色 暗号”にも現れていると思う。作詩は剛、作曲は光一。胸の鼓動が高鳴るような切ないメロディに乗せて、これもまた女性目線のラブソングが綴られている。でも《そのふたりだけが/唱えられる 銀色 暗号》という歌詞に込められているのは、「相方」との何ものにも代えられない確たる心の結びつきのような気がしてしまう。

バラードは言葉が持つ本質的な輝きをダイレクトに伝えてくれる音楽なのだと思う。そしてKinKi Kidsの作品には、そんな普遍的なメッセージを含んだ大切なバラード曲がたくさんある。それを知る足がかりとして、これまでKinKi Kidsのアルバムをあまり聴いたことがないという人にも、ぜひ手にとってほしい一枚だ。このアルバムの通常盤には、“White Avenue”と、昨年リリースされた37枚目のシングル曲“道は手ずから夢の花(20th Anniversary Ver.)”の2曲が追加されていて、“White Avenue”は、美しいストリングスをバックに、ふたりの声が穏やかに伸びやかに響く、KinKi Kidsの真骨頂とも言うべき感動的な王道バラード。
《降りしきる雪の中 二人/真っ白な道の先が/どんなに遠く長くても/一歩ずつでいい 足跡残してゆこう》
ユニゾンで歌われるこの歌詞のメッセージは、やはり今のKinKi Kidsがしっかりと残しておきたい言葉のひとつなのだと思う。(杉浦美恵)
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