ロック活況が続くUKでは、何が起こっているのか? 最前線でシーンを牽引するレーベル、ラフ・トレード、ニンジャ・チューンそしてワープが語る、UKロックの現在地【インタビュー全文掲載】

ロック活況が続くUKでは、何が起こっているのか? 最前線でシーンを牽引するレーベル、ラフ・トレード、ニンジャ・チューンそしてワープが語る、UKロックの現在地【インタビュー全文掲載】 - rockin'on 6月号rockin'on 6月号

NINJA TUNE
(A&R、Clemmie Woodhouse)


●ブラック・カントリー・ニュー・ロードが登場したサウス・ロンドンのDIYなインディ・コミュニティの動向も含め、現在のインディ・シーンに対する認識を教えてください。

「明確に言えるのはこれらのバンドが、ライブによってファンを増やしているということ。パンデミック前には、サウス・ロンドンのブリクストンにあるウィンドミルを中心に、大きなシーンが生まれていた。

そういったスペースが提供しているのは、バンドが成長するための文化的ハブであり、そこで彼らは才能を育み、コラボレーションを促すコミュニティを作り出しているんだ」

●ニンジャ・チューンは90年代から今日のザ・シネマティック・オーケストラやボノボのようなアーティストまで、エレクトロニック・ミュージックやヒップホップに強いレーベルというイメージですが、そんなニンジャ・チューンがBCNRと契約を結んだのは新局面だと感じました。彼らとの契約で決め手となったものは?

「BCNRは本当に素晴らしく、A&Rにとっては最初からそれが決め手でした。 最終的には、自分たちが好きなアクトと契約するということに尽きます。

ニンジャ・チューンのサウンドに対する世間の認識が実際とは異なっていることは感じています。この31年間、我々はさまざまなスタイルのアーティストと契約してきましたし、エレクトロニックやヒップホップもあれば、ロック、シンガー・ソングライターもいる。

特にBCNRの音楽は複数のジャンルにまたがっているので、バンドのDNAと、エレクトロニック・レーベルとしての私たちに対する人々の認識の間にも、間違いなく音的な重なりがあります」

●BCNRのデビュー・アルバム『フォー・ザ・ファースト・タイム』が全英チャートで4位を記録したのは快挙だったと思います。

「私たちと契約する前から、彼らはかなり話題になっていて、素晴らしいライブによってすでにファンベースを築いており、たった2曲しかリリースしていなかったにもかかわらず、ロンドンのヴィレッジ・アンダーグラウンドのような大きな会場を完売させました。

我々の経験では、良いレコードと良い宣伝があれば成功する可能性は高いです。このアルバムは本当に素晴らしいので! 彼らはライブ活動によってすでに素晴らしい基盤を築いて支持を得ていたので、当然プロモーション戦略としてもライブという側面に目を向けるつもりでした。しかしパンデミックの影響でツアーが延期されたため、別の戦略を立てなければなりませんでした。

そんな中でもバンドは、素晴らしいストリーミング・ライブを成し遂げてアルバムをリリースしました。それ以外では、D2C(自主流通)に重点的に取り組みました。今作はアナログ盤がよく売れることが分かっていましたし、物理的なセールスはとても重要でした。全体として私たちの主な目的は、アンダーグラウンドかつ草の根レベルの話題をメインストリームの認知度に変換することであり、ラジオやマスコミなどを通じてそれを実行しました」


●BCNRの成功は、ニンジャ・チューンの今後の契約レパートリーに影響を与えそうですか?

「我々は今後も自分たちが大好きな音楽をリリースし、できる限りの努力をしていきます。今回人々が思う我々の基準とは少し異なるアルバムを制作し、それがここまでの成功を収めることができたのは、本当にエキサイティングなことです。今後もバンド音楽にこだわらず、さまざまなジャンルをリリースしていくつもりです」

●サブスク・ストリーミングがリスニング環境のデフォルトになっていく流れは、ギター・ロック、バンド・ミュージックにとって逆風であるという説も言われていますが。

「サブスク・プラットフォームはとても協力的ですし、非常に多く再生されている現代のギター・アクトがたくさんいると思うので、このリスニング環境がギター・ロックやバンド・ミュージックにとって逆風であるとは感じません。BCNRはフィジカル・セールスも絶好調なので、消費形態はストリーミングだけではなくふたつの混合です」

●アメリカではバンド・ミュージックがパワーを失いつつあります(昨年のビルボード・チャートで1位を獲得したロック・アルバムはマシン・ガン・ケリーの新作1枚きりでした)。その状況と比較すると、イギリスではバンド・ミュージックがまだ持ちこたえているようにも思います。そこにはイギリスの市場ならではの理由があるのでしょうか?

「ギター・ミュージックは長年にわたってイギリスの文化に織り込まれており、それはこの国特有のものです。しかし、BCNRの場合、彼らの成功は英国内に限られたものではなく、海外にも多くのファンがいます」

●2020年代に成功できるバンド、求められるバンドにとって必須要素とは何だと考えていますか?

「結局は芸術性というところに尽きると思います。BCNRの場合、彼らの音楽は完全に本物であり、そのライブは人々を魅了します。彼らはこの点でアーティストとして際立っており、それが、毎日のように新たなアーティストたちによって膨大な数の曲がリリースされている現在にあって、リスナーに魅力的に映ったのです」

●新型コロナ・ウィルスのパンデミックを経験したことは、これからのインディペンデント・ミュージック、(ジャンル問わず)インディペンデント・レーベルにどんな影響をもたらすと考えていますか。

「パンデミックは業界全体、特にライブ業界に影響を与えているので、ライブが再開されることを楽しみにしています。しかしアーティストやレーベルは、この間、この状況に適応してきたように思います。我々もパンデミックの間にアーティストのキャンペーンに取り組む際には、既成概念にとらわれずに考えなければなりませんでした」

●今注目している未契約のバンド、ロック・アーティストがいたら教えてください。

「たくさんいます。ちょうど非常にエキサイティングなロック・アーティストにオファーしたところです。今このジャンルは間違いなく活気付いていると思います」

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