luki @ UPLINK FACTORY

luki @ UPLINK FACTORY - All pics by KAZUMICHI KOKEIAll pics by KAZUMICHI KOKEI
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6月19日に、彼女自身にとって約1年半ぶりのリリースとなるミニ・アルバム『パープル』を発表したlukiの、リリース記念ライブ。会場は、ミニシアターやギャラリー、カフェレストランなどを運営する渋谷のカルチャー・センター、UPLINK FACTORYである。映画好きのlukiが、小ぶりな劇場で映像とのコラボレーション・ライヴを行うという趣向だ。なお、今回のリリース記念ライヴは七夕の夜のみではなく、7月12日(金)にも同会場にて開催されるので、興味を持たれた方はぜひ足を運んでみて欲しい。

オーディエンスで埋まった座席を前に、バンド・メンバーと揃って姿を見せた緊張の面持ちのlukiは、淡いグリーンの衣装に深いブルーの照明を染み込ませながら、ステージ中央の位置につく。サポートするバンドは円山天使(G.)、山本哲也(Key.)、中川量(Ba.)という顔ぶれである。オープニング・ナンバーの“舟で待つ”は、lukiのハスキーがかったウィスパリング・ヴォーカルがたなびき、柔らかな包容力に満ちてゆく。水滴が、横向きに流れ落ちるという抽象的な映像をバックに、自身のペースでライヴの時間を作り始めていく。まだ少し緊張を残しながら来場者に感謝の言葉を投げ掛け、ライヴのコラボレーション映像を手掛けた三嶋章義を紹介すると、「曲を作るときは、歌詞やメロディーも大事なんですが、映像というか、空気を思い浮かべながら作ります。今日は映像とコラボ出来ると言うことで。すごいでしょ?」と語る。

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『パープル』という新たな作品に至って、lukiの表現は歌唱法ひとつとっても大きく変わった。ハスキーな美しいヴォーカルはそのままなのだが、“三毛猫シェリー”のコケティッシュな節回し(ライヴの映像も、メープルシロップのしたたるパンケーキやマフィン、色とりどりのフルーツが飛び交うというガーリーで悪戯なイメージ)であったり、アンニュイなアプローチで情感を膨らませるチルウェイヴ風ナンバー“白い月”では自らシンセの波形をゆらめかせてみたり(本人はピアノ・デビューと言い切っていたが)。『パープル』の楽曲の多くがフェミニンな感触で統一感をもたらしているのは、単純に女性性を強調するというわけではなくて、「わたし」と「あなた」の関係性、lukiが語るところの「映像/空気」を強く浮かび上がらせることにある。つまり、表現をより明確に、強靭なものにするための変化だったのだと思う。

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ライヴ中盤にはハーモニカを取り出し、「ブルース・ハープという呼び方はあまり好きではなくて。というのも、ブルースばかりやっているわけじゃないから。でも、ブルースは避けては通れない道なので」と語るluki。円山との2人のセッションで披露された“石鹸は薔薇の匂い”は、確かに曲調はブルースなのだけれども、以前の彼女がプレイしていたソリッドなブルース・ロックとはまったく異なる、これまたフェミニンな魅力を振りまくナンバーになっていた。続いて2本使いのハーモニカでフォーキーな旋律を吹き鳴らすインスト・チューンも披露すると、「『パープル』は、皆さんの意見も聞きながら8曲に絞って。そのときに迷った曲をやります。この曲も良いって言って欲しくて(笑)」と告げながら“→(やじるし)”へと向かう。これも、「わたし」と「あなた」の関係性を強く浮かび上がらせるエモーショナルな歌という点で、確かに『パープル』の流れを汲むナンバーであった。

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ステージ上が4人編成のバンドに戻ったところで、スクリーン一杯に映し出される花火を背景にした“スイッチ”、渦を巻きながらもうもうと立ち上る煙やオーロラを背負った“君は勝手に泣いてくれ”、そして無数の植物が芽吹き、次々に開花してゆく映像の“まだ間に合うから”という本編のクライマックスは、映像の躍動感も素晴らしかったけれど、激しい感情の迸りであったり、優しくしなやかな意志の塊であったりするlukiの表現を、イメージとしてスムースに伝播させてしまう歌の実力が遺憾なく発揮されていた。オーディエンスの催促に応えてアンコールで披露された“世界は変えなくていい”は、まさに「わたし」と「あなた」のコミュニケーションの本質を突く楽曲であり、不思議なことだが“世界は変えなくていい”というこの歌こそが、世界を変えてしまう可能性を内包しているのである。lukiは最後まで、少々の緊張感をその表情に滲ませ、それを振り払うように数々のジョークも放っていたが、極めて濃密なパフォーマンスとなった。7/12の再度の機会を、ぜひ活用して頂きたいと思う。渋谷駅からUPLINK FACTORYへのアクセスについては、lukiの公式ブログ『lukipedia』の7月7日付けの投稿においても、親切丁寧に説明されています。(小池宏和)

01. 舟で待つ
02. 君のかけら
03. 三毛猫シェリー
04. 白い月
05. 石鹸は薔薇の匂い
06. インスト
07. →(やじるし)
08. ヴェルベーヌ
09. スイッチ
10. 君は勝手に泣いてくれ
11. まだ間に合うから
EN. 世界は変えなくていい
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