ASIAN KUNG-FU GENERATION presents NANO-MUGEN FES. 2011 2日目 @ 横浜アリーナ

「ああ、着いたの? え? 座れない? 俺いまステージにいるから、みんなに言っておくわ」。伊地知潔(Dr.)とのアジカン・リズム隊コンビで前説に登場したはずの山田貴洋(B./Cho.)が、携帯に向けてそんなことを言っている。「誰?」「ああ、親。座席に誰かの荷物が置いてあって、座れなくて困ってるんだって」「昨日も言いましたけど、席取りはやめましょうね皆さん。最終的に怒られるの、僕たちなんで」。そんなふうにユルい小ネタで注意事項を伝えつつ、NANO-MUGEN FES. 2011の2日目も順調に幕開けだ。山ちゃん&キヨシが大勢のオーディエンスとともにカウントダウンし、NANO-MUGEN FES.の歴史を振り返る映像がスクリーンに映し出される。それでは以下、初日ライブレポートに引き続き、各アクトをショート・レポート+セットリストという形式でお伝えしていきます。

ASIAN KUNG-FU GENERATION presents NANO-MUGEN FES. 2011 2日目 @ 横浜アリーナ - pic by TEPPEIpic by TEPPEI
●BOOM BOOM SATELLITES(BAND STAGE)
キヨシが「以前から出演をオファーしていて、遂に念願かなった」と紹介していたブンブンサテライツ。次第次第に浮上してゆくようなドラマティックなシークェンスを川島の近未来的なオートチューン・ボーカルがかいくぐり、中野がツマミを回して扇動的なビートが立ち上がってくる。前線からオーディエンスのジャンプが波紋のように広がってゆく光景が美しい“DIG THE NEW BREED”だ。そしてまだ正午にもなっていないという時間からの、狂騒のキラー・チューン連打である。それにしても、サポート・ドラマーである福田洋子のプレイが飛躍的な成長を見せていて素晴らしい。荒馬の様に前のめりに駆けるロックなビートはこの人の元々の持ち味だが、4つ打ちでどっしりとしたダンス・ビートを支える技術が加わって鉄壁である。男の色香を感じさせる川島のハイトーン・ボイスが伸び、ベースを抱えた中野も前線に躍り出て煽る。あっという間のステージだったけれど、ラストは荘厳なシンフォニーのような美しき爆音を届ける“STAY”でフィニッシュ。いきなり貫禄たっぷりの贅沢なトップ・バッターであった。

1:DIG THE NEW BREED
2:BACK ON MY FEET
3:MOMENT I COUNT
4:KICK IT OUT
5:STAY

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●モーモールルギャバン(BAND STAGE)
まだ照明も当てられていないサウンドチェック中からゲイリー・ビッチェ(Vo./Dr.)が奇声を発しまくり、“美沙子に捧げるラヴソング”を丸々披露してしまった。昨年のNANO-MUGEN CIRCUIT 2010横浜公演にも参加していたモーモー。そして改めて本編でステージに走り出してくるや否や、ゲイリーはドラム上空に設置されたマイクに齧りつき、《君のスカートめくりたい~♪》とアカペラで熱唱。ユコ・カティのけたたましいオルガンとコーラスを巻いて走り出した。「ナノムゲーン!」と一発シャウトしてゲイリーがマルガリータのベースに合わせたステップを踏みつつスタートした“ユキちゃんの遺伝子”のディスコ・ビートは、まるでネジを数本落っことしてしまったような危ういグルーヴで転がる。なのになぜ鉄壁のブンブンと同じぐらい盛り上がってしまうのか。ユコがリード・ボーカルを務める楽曲群は比較的心地よく聴けるが、そんなときのゲイリーのドラムはここぞとばかりに無茶なオカズを入れまくっている。いちいち過剰である。お馴染みのパンティ・コールやらゲイリーの限界脱衣やらも盛り込まれ、しかし決してマンネリには陥らない。「人生が1ミリだけ楽しくなる!」という言葉どおりの、今一瞬を全力で生きるパフォーマンスであった。ところでスクリーン映像カメラマンの方、しばしばゲイリーの股間をズームアップするのはやめて頂きたい。

1:Hello! Mr Coke-High
2:ユキちゃんの遺伝子
3:コンタクト
4:ユキちゃん
5:サイケな恋人

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●星野源(ACOUSTIC STAGE)
さて、BAND STAGE下手側、フェスのロゴ・マークをかたどったオブジェ型の緞帳がスライドすると、そこにACOUSTIC STAGEが現れる。登場したのは役者にして文筆家にしてSAKEROCKリーダーにして昨年ソロ・アーティストとして本格的デビューを果たした星野源である。セットはボーカル・マイクとアコースティック・ギターのマイクがそれぞれ1本ずつのみ。ポップ・ソングの「必殺の一行」が次々に繰り出される“歌を歌うときは”を弾き語りしてオーディエンスの意識を鷲掴みにする圧巻のオープニングだ。生活感のリアルを捉え、諦観とその先で見つける希望に満ちた歌の数々に誰もが釘付けになっている。「いつもはゆず茶で、粉末で作るやつを持ってくるんですけど、冷蔵庫に入れておいたら、腐ってました(笑)。なので今日は水でお送りしています」。2日間で弾き語りが自分だけだ、と気にしていたが、小ぶりなステージのソロ弾き語りでアリーナ全体の視線を奪ってしまうのは、むしろ有利なのではないだろうか。源くんの表現力あればこその話だが。「死にたくなる歌だね、って言われます(笑)。前向きに歌ってるつもりなんですけど。でも最近はいろいろあって、いつ死ぬか分からないし、死を意識するのもいいことかな、と思って」。“老夫婦”の穏やかなメロディの中の凄まじい描写、そしてシングル曲“くだらないの中に”まで、素晴らしいパフォーマンスだった。スクリーン映像もフォーカスをぼやかしたり照明を効果的に使ったり、異常にかっこいいものであった。先ほどは文句を垂れてすみません。

1:歌を歌うときは
2:キッチン
3:ばらばら
4:くせのうた
5:ひらめき
6:老夫婦
7:くだらないの中に

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●WE ARE SCIENTISTS(BAND STAGE)
アジカン後藤正文(Vo./G.)&喜多建介(G./Cho.)組によって「飲食エリアにいる人、もどってこーい!」というコールが果たされると、ニューヨーク出身で2日間連続出場のウィー・アー・サイエンティスツが登場だ。タイトなコンビネーションの3ピースが、知的で気の利いたソング・ライティングの持ち味を次々に披露してゆく。彼らのステージを観るのは随分久しぶりのことだったけれども、話に聞いていたとおりダイナミックでガッチリとした演奏力を身につけていて素晴らしいライブ・バンドに成長していた。ギターを掻きむしりながら熱い歌を届けてくるキースと、眼鏡のベーシスト/クリスのボーカルのハーモニーも絶妙だ。これは本当にNANO-MUGEN好みなバンドである。安定感抜群のファンキーなビート・ポップ“アイ・ドント・バイト”や鋭利なダンス・ロック・ナンバー“ジャック・アンド・ジンジャー”といった昨年の新作の楽曲を含めた、前日とは数曲が入れ替えられたセットで魅せてくれた。アジカンへの感謝の言葉を述べると、最後の“アフター・アワーズ”ではレンタルズのマット・シャープが飛び入りし、ひとしきり跳ね回った後にキースを抱きかかえてフィニッシュ。楽しい。

1:I DON'T BITE
2:LET'S SEE IT
3:NOBODY MOVE,NOBODY GET HURT
4:CAN'T LOSE
5:PITTSBURGH
6:DINOSAURS
7:JACK AND GINGER
8:AFTER HOURS

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●THE YOUNG PUNX! & PHONAT(DANCE STAGE)
今後はBAND STAGE上手側の緞帳が開き、DANCE STAGEでお馴染みザ・ヤング・パンクス!の登場だ。UK出身バンドなのに、すっかりNANO-MUGENの火付け役としてポジションが定着している。セット・リストを観る限り初日とほぼ同じ内容のステージではあったが、けたたましいブレイクビーツ~マッシュアップ~グライムでオーディエンスを沸騰させる。プロディジーの“スマック・マイ・ビッチ・アップ”のフックを用いたその名も“マッシュイットアップ”やらオアシス“ワンダウォール”のマッシュアップやら大ネタ連発。ゲストとして登場したPHONATの作品“ゲットー・バーニン”は盛り上がったが、ふくよかで大柄な体躯の女性ゲスト・ボーカル、KOKOの活躍ぶりも素晴らしかった。まさにソウル・ママといった迫力の歌唱力に、テクニカルなラップ・パフォーマンス、一転してラガマフィン・トースティングと多彩なボーカル技術でダンス・チューンの威力を増幅させてゆく。ヤング・パンクス!/ハルのピエロ面姿も飛び出して、全員が最後までジャンプし続けるお祭りぶりであった。

1:SugarCandySuperNova SuperFrank
2:MASHItUP
3:Juice & Gin - Riva Star
4:Juice & Gin VS Blau
5:Skateboard chase
6:You've Got To(2011 junglist mix)
7:Ghetto Burnin
8:Ready For The Fight(original)
9:Ready For The Fight(phonat)
10:Wonderwall VS Warhead
11:Rockall

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●佐野元春 and The Hobo King Band(BAND STAGE)
そして日本語ロックのレジェンド級大物、佐野元春が登場だ。The Hobo King Bandによる盤石のイントロ・セッションの中に、赤いテレキャスを抱えた元春がステージ袖から走り出てくる。銀色のたてがみを揺らし、“ナポレオンフィッシュと泳ぐ日”を歌い上げてゆく。マシンガンのように火を吹く長田進のギター・プレイやファンキーに弾けるDr.kyOnのピアノとの呼吸も万全だ。こういった比較的客層の若いイベントに出演するとき、元春は敢えて古いレパートリーをズラリと揃えてくることがある。恐らく、元春自身が若い頃に歌った歌を、今の若い人に届けるべきだと考えているのである。“約束の橋”では「素晴らしい友人を紹介します。ASIAN KUNG-FU GENERATION、ゴッチ!」と呼び込みをして、二人でメロディを交代で歌い、或いはハーモニーを届けたりする。ゴッチ、堂々とした見事な歌いっぷりである。海外の多くのアーティストに触発されながら、日本語オリジナルのロックを開拓し、シーンの最前線をひた走るという点もこの二人は似ている。そしてガッチリと握手をし、眩いまでの“サムデイ”シンガロングへ。ラストは元春自らエディ・コクラン風の50年代ロックンロール・リフを繰り出し、デビュー曲“アンジェリーナ”へ。「愛する気持ちさえ分け合えれば、I love you!!」「You love me!!」の恒例コール&レスポンスによって、若き魂のステージを終えたのであった。

1:ナポレオンフィッシュと泳ぐ日
2:99ブルース
3:ニュー・エイジ
4:ヤング・フォーエバー
5:約束の橋 (w/後藤正文)
6:SOMEDAY
7:アンジェリーナ

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●ストレイテナー(BAND STAGE)
「NANO-MUGENはストレイテナーにとってホームなんで。去年は無かったんだけど」。「俺の知らないとこでやってたらどうしようと思って」。「立ち直れないね」。ホリエとシンペイのそんなやりとりもあったが、まさに余裕の圧勝ムードという感があったテナーである。個人的な印象だが、アリーナ内に一体感を生み出しながらも、この日のテナーはメンバーそれぞれが繰り出すバラバラなフレーズが折り重なって巨大な造形物を構築してゆくさまを、何度も執拗に見せつけてゆくようなところがあった。これまでに生み出されてきた必殺ナンバーの連打ではあるのだけれど、よりディープに交わってゆくアレンジメントが瞬間瞬間のドラマを生み出しながら生々しく迫ってくる。ガッチリと纏まっているのにどこまでもスリリングで、ダイナミックなのに美しくて、爆発力と浮遊感とが共存している感じ。そういう一見すると二律背反したイメージをまとめて成立させてしまう奥行きがテナーの表現にはあって、この日のステージでは特にそれが強調されている気がした。冒頭に触れたシンペイとのやりとりの後、ホリエが「じゃあゴッチが好きな“CLARITY”って曲をやります」と演奏に向かう。これも一言では言い表すことが出来ない、奥行きのある魅力に満ちた曲だ。そして4人は最後に列を成して肩を組み、挨拶して去っていったのだった。

1:VANISH
2:KILLER TUNE [Natural Born Killer Mix]
3:PLAY THE STAR GUITAR
4:Man-like Creatures
5:VANDALISM
6:BERSERKER TUNE
7:CLARITY
8:羊の群れは丘を登る
9:Melodic Storm

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●THE RENTALS with ASH/GOTCH(ACOUSTIC STAGE)
さて、アコースティック・セットだったはずが、ゲストを交えたセッションで話が膨らみまくった末のレンタルズ2日目。もう、この際だからはっきり書いてしまって良いでしょうか。マットが悪い。レンタルズのローレンやサラ、アッシュやWASやアジカンの面々は何も悪くない。むしろ、ダーティーなオルタナ・バンド色の中にキーボードの愛らしいフレーズが漂うバンドの演奏はかっこ良かったし、僕は好きだった。なのに、マットが歌えない。最初から最後までずっと飛び跳ねているからだ。もちろん新しさなんてものは微塵も期待しちゃいないが、一応これでも懐メロとして楽しみにしていたんだ、レンタルズを。なのに、アッシュの“ジャック・ネームス・ザ・プラネッツ”をカバーするといってそれをティム本人に歌わせてたら、本家アッシュによる豪華なカラオケどころか「ティムの隣の特等席でアッシュを聴いてるただのオーディエンス」だろう。唐突に“ハッピーバースデー”を歌い出し、“ア・ローズ・イズ・ア・ローズ”で共演したゴッチがケーキを運び込んで場内の全員がティムの誕生日を祝う、というハッピーなサプライズもあった。そして決して広くないACOUSTIC STAGE上で総勢10名のミュージシャンが“ゲッティング・バイ”を披露して笑顔で幕となったのだが、後の建ちゃん&山ちゃんのMCによって「ティムは誕生日でもなんでもなく、あれはマットのアメリカン・ジョーク」であることが判明。もちろん場内騒然である。あんまりだ。

1:OCT13 (LAUREN)
2:The Love I'm Serching For
3:Hello,Hello
4:Waiting
5:Barcelona
6:A Rose is A Rose (w/GOTCH)
7:Please Let That Be You
8:Keep Sleeping
9:Jack Names The Planets
10:Friends of P.
11:Getting By (w/AKG)

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●MANIC STREET PREACHERS
気を取り直して、2年前にニッキー(B.)の体調不良によりキャンセルとなってしまったマニックスの、リベンジとなる待望のステージ。建ちゃんは「オーラがあり過ぎて近寄れなかった」と語っていた。これはまず、セット・リストを見て頂きましょう。どん!

1:You Love Us
2:Your Love Alone Is Not Enough
3:(It's Not War) Just the End of Love
4:Everything Must Go
5:Motorcycle Emptyness
6:You Stole The Sun from My Heart
7:Life Becoming a Landslide
8:Faster
9:If You Tolerate This Your Children Will Be Next
10:Slash N' Burn
11:Postcards From A Young Man
12:Motown Junk
13:Design For Life

どうでしょう。「ベスト盤か!」みたいなセット・リストである。マニックスならこれぐらいの規模のステージでも3人で楽勝なのだが、ギターとキーボードのサポートがそれぞれ1名加わった5人編成でこれをやる。「ハローハロー! ゲンキデスカー!」の挨拶から、いきなり“ユー・ラヴ・・アス”のギターを弾きまくるジェイムス(Vo./G.)。やばい。オーディエンスによるハンド・クラップの中で披露された“(イッツ・ノット・ウォー)ジャスト・ジ・エンド・オブ・ラヴァー”の後には、伸びやかに歌い上げられる“エヴリシング・マスト・ゴー”だ。キーボードが効果的に使われて良い。でかいサングラスとバットマン・マークを背負ったド派手なジャケット姿のニッキーが2年前のキャンセルについて謝罪したあと「(失踪したギタリスト)リッチー・ジェームスに捧げる」と告げて“モーターサイクル・エンプティネス”! 更には「この曲は、日本でビデオを撮影したんだよ。ナゴヤー、ヒロシマー、センダイー、トーキョー、とかね」と“ライフ・ビカミング・ア・ランドスライド”、そして“ファスター”の爆走へ。荒れ狂うナンバーとダイナミックに広がる美メロ、初期のナンバーと新曲が織り交ぜて繰り出される。完璧だ。熱唱しながらギターを弾くジェームスにニッキーがちょっかいを出しているのを見ると、何とも言えない気分になる。“モータウン・ジャンク”の後に壮大なストリングスのように広がるキーボード・サウンドで“デザイン・フォー・ライフ”が披露され、彼らは去っていった。感無量である。

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●ASIAN KUNG-FU GENERATION
そして遂に、2日目にしてトリを務めるアジカンが登場だ。シグナル音とシンクロしたLEDがステージ上で点滅し、期待感を募らせる。大きな歓声の中でギターが掻きむしられ、“リライト”が走り出した。そしてサイケデリックな音の空間を押し広げながら突き進む“Re:Re:”、カラフルな照明の中で変則的だがガッチリとしたロール感で転がってゆく“マジックディスク”へと繋ぐ。「本当にいろんな積み重ねを経て、今年もこのフェスを開催することができました。どうもありがとう。まだ明日1日、休みがあるけど、その後にはまた日常が待っているわけですから、なんというか、補給して帰ってください。俺たちは音楽があれば大丈夫だ。“All right part2”」とまたすぐに楽曲に向き合ってゆくゴッチである。それにしても、涼しい顔をして高度なバンド・アンサンブルをビシビシと決めてゆくアジカンの姿は実に頼もしい。ゴッチ自らが発行した新聞『THE FUTURE TIMES』については「無関心を焼き尽くす、ってことなの。このフェスもそうだけど、いろんな考え方とか価値観が混じり合うから面白いわけじゃん? そういうふうにしていかないと何も変わらないと思うし、俺は今の時代に生まれて良かった、って思いたいから」と説明してゆく。そのせいだろうか、この後の“フラッシュバック”や《伸ばした手から漏れた粒が/未来を思って此処に光る》と歌われる“未来の破片”は、何かこれまでと違う聞こえ方がしていた。この後にゴッチは、3.11以後のポップ・ミュージックに付きまとってきた「節電」や「不謹慎」といった摩擦に苦しめられてきたことを明かした。「でも、大事なのは自分がどうしたいかであって。それはすべてのことに通じるんじゃないかと思って。だからこのフェスは絶対させる!って」。そしてヘヴィなグルーヴで更に高まってゆく“センスレス”、オーディエンスの間の手を巻きながら進む“アンダースタンド”、レンタルズのマットとローレンがステージに飛び込んで煽り立てる“君という花”と、芯の強いポジティブなエネルギーを増幅させていった。いよいよの本編ラストは“転がる岩、君に朝が降る”だ。大きなエモーションを伴う戦いを経ての大団円である。アンコールではゴッチが「また来年もやりたいんで、ぜひ遊びに来てください」と、シンプルながら大きな、次なる約束を掲げて“ループ&ループ”“新世紀のラブソング”を披露するのであった。

1:リライト
2:Re:Re:
3:マジックディスク
4:All right part2
5:アフターダーク
6:ブルートレイン
7:N.G.S
8:フラッシュバック
9:未来の破片
10:ソラニン
11:センスレス
12:アンダースタンド
13:君という花
14:転がる岩、君に朝が降る
EN-1:ループ&ループ
EN-2:新世紀のラブソング

肯定的であろうとするために苦しみ、戦うアジカンがいた。それが今回のNANO-MUGEN FES.2011であった。彼らのセット・リストはまさにそういうものになっている。状況に溺れ、流されることは「肯定的」ではない。そんな大原則にぶちあたって自分自身のために道を切り拓く、そういうロック・フェスがこの日本にはある。ゴッチも言っていたが、こんな状況の日本に来てくれる海外アーティストたちも、腹を決めて戦ってくれているのだ。素晴らしいフェスだった。終演後、物販エリアで笑顔を一杯にしてCDにサインしているマット・シャープも微笑ましくて、なにか大きなエネルギーを貰った気がした。(小池宏和)
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