秋山黄色が盟友・緑黄色社会と紡いだ愛とリスペクトによる「かけがえのない時間」──対バンツアー「BUG SESSION」全3公演徹底レポで、秋山黄色の表現の本質をひもとく! Part 1・Zepp Osaka Bayside編

秋山黄色が盟友・緑黄色社会と紡いだ愛とリスペクトによる「かけがえのない時間」──対バンツアー「BUG SESSION」全3公演徹底レポで、秋山黄色の表現の本質をひもとく! Part 1・Zepp Osaka Bayside編 - All photo by 小杉歩All photo by 小杉歩
秋山黄色による東名阪を回る対バンツアー「BUG SESSION」がスタートした。初日となる4月4日のZepp Osaka Bayside公演には緑黄色社会を、続く4月5日Zepp Nagoya公演にはPEOPLE 1を迎えて開催されるこのツアー。最終日、4月12日のZepp Haneda (TOKYO)公演は「秋山黄色(ソロ)vs 秋山黄色(バンド)」という異例の形式の対バンによって行われる。緑黄色社会とPEOPLE 1という、この時代、この国で「バンドとは何か?」という問いについて考えるならば絶対に外すことはできない2組と、自分自身のバンド編成との対バン。この「BUG SESSION」で、秋山黄色は、「バンド」という「人間と人間」の表現に改めて向き合うことになるのだろう。

この記事では初日、緑黄色社会を迎えた大阪公演の模様をレポートする。ちなみに「BUG SESSION」というツアータイトル、「BUG」という言葉の意味についてはこの日の公演の最中に本人が明かしていたので後述するが、「SESSION」というのもまた、秋山黄色の中に深く根差す音楽の在り方なのだろう。秋山黄色という存在の本質の一端を表しているようなタイトルを冠したこの対バンツアーは、きっと彼のキャリアの中でとても重要な出来事として記憶されるに違いない。


秋山黄色が盟友・緑黄色社会と紡いだ愛とリスペクトによる「かけがえのない時間」──対バンツアー「BUG SESSION」全3公演徹底レポで、秋山黄色の表現の本質をひもとく! Part 1・Zepp Osaka Bayside編
初日、大阪。先攻としてステージに登場した緑黄色社会は、最新シングル曲“ナイスアイディア!”でライブをスタート。この夜はもちろん、「BUG SESSION」ツアーの始まりすらも祝福するかのような、しなやかで鮮やかな演奏を繰り広げていく。カラフルな照明に照らされながら、重なるそれぞれの楽器の音、それぞれの歌声。フロアの奥の奥にまで浸透していくような高い訴求力を持つパフォーマンスに、今のリョクシャカの存在の大きさとたくましさを感じる。

MCで長屋晴子(Vo・G)は、秋山のことを「黄色っち」と呼びながら、2021年にリョクシャカが主催するイベント「緑黄色夜祭」に秋山が出演した時のことを振り返るなど、2組の関係性を語った。レーベルメイトであり、穴見真吾(B)以外のメンバーは同い歳でもあるという秋山に親しみを込めるその語り口には2組の親交の深さを感じたが、中でも小林壱誓(G)と秋山の関係は「親友……というより、もはや家族」と言えるほどのもののだという。長屋は「壱誓と黄色っちの関係は、私からすると羨ましい。きっと私たちにも言わないような話もたくさんするだろうし、そこでお互いに新しい世界を見つけていくだろうし。音楽でも、お互いが尊重し合って、リスペクトし合って、こうして正真正銘、同じステージに立っているふたりの関係は、とても素敵だと思う。ずっとずっと続いていってほしい」と語った。そして、そんな言葉に続いて始まった曲は、“ずっとずっとずっと”。まるでリョクシャカから秋山へのメッセージのようだった。

秋山黄色が盟友・緑黄色社会と紡いだ愛とリスペクトによる「かけがえのない時間」──対バンツアー「BUG SESSION」全3公演徹底レポで、秋山黄色の表現の本質をひもとく! Part 1・Zepp Osaka Bayside編
秋山の「家族」こと小林もまた、思いを語る場面も。「俺が来たからには、大暴露。黄色のこと知りたいよね?」と問いかけると、フロアに集まった観客たちが大歓声で応える。そして投下された小林による秋山黄色の大暴露は……「あいつ、カラオケ行くと、絶対に“ハナミズキ”歌う」。拍子抜けしたように「それだけ?」と問いかける長屋に、「何も言うことないんだわ。家族すぎて」と返す小林。大事なことほど言葉にしてはいけない時がある。言葉にすると野暮なほど本当に幸福な関係性が、小林と秋山の間にはあるのだろう。家族の新たなツアーの始まりを祝福するように、小林はラストの“始まりの歌”の間奏で「BUG SESSION!」と、全身全霊という言葉が相応しいほどに力強く叫んだ。

友愛と尊敬に満ち、だからこそ馴れ合いではなく、しっかりと自分たちのライブを見せつける。そんな緑黄色社会の芯の通ったスタンスを感じさせるステージだった。


秋山黄色が盟友・緑黄色社会と紡いだ愛とリスペクトによる「かけがえのない時間」──対バンツアー「BUG SESSION」全3公演徹底レポで、秋山黄色の表現の本質をひもとく! Part 1・Zepp Osaka Bayside編
そして、後攻に登場した秋山黄色。強烈なビートが響き渡るSEをバックに、井手上誠(G)、Shunta(D)、藤本ひかり(B)という3人のサポートメンバーとともにステージに上がった秋山は、初っ端から獰猛な音塊を響かせる。時に本能のまま叫ぶように、時にぽつりぽつりと語るように、時に流麗なメロディに思いを託すように──様々な状態を瞬間的に移動していく秋山。秋山黄色の真骨頂とも言えるその柔軟な状態変化は、混乱したカオスというよりはむしろ「この、とりとめのなさこそが人間だろう?」とでも言うような「自然」として提示されていく。彼の表現の魅力が、4ピースバンドの見事な肉体感と手さばきによって、ライブという現場でも見事に私たちの目の前に提示され、その場にいる人々を飲み込んでいく。観客に手拍子を仰ぐなど、ステージ上の熱とフロアの熱狂を混ぜ合わせる、秋山。彼が放つ熱がわざとらしくなく、いつもどこか清々しいのは、彼自身の「嘘のなさ」が演奏にも表れているからだろう。

秋山黄色が盟友・緑黄色社会と紡いだ愛とリスペクトによる「かけがえのない時間」──対バンツアー「BUG SESSION」全3公演徹底レポで、秋山黄色の表現の本質をひもとく! Part 1・Zepp Osaka Bayside編
最初のMCのタイミング。こねくり回した台本を読むような言葉ではなく、今この瞬間に心から喉元にやってきた言葉をサッと捕まえて、私たちの前に差し出す、あのいつもの彼らしい語り口で、秋山は集まった人々への感謝を伝え、続けて「周りの人が倒れたら、助けましょうや」と注意喚起する。そして、リョクシャカのステージでの小林の暴露(?)へのお返しとばかりに「何を暴露すっかな!」と声を張り上げると、フロアからは大歓声が。そんな秋山が小林について暴露したのは……「恥ずかしいからオフレコだよ? 俺といる時、壱誓は長屋さんの歌を褒めてます」。そんな、暴露というよりは素晴らしきエピソードを開陳したあと、秋山はこう続ける。「どうしても夢潰えるんですよ、音楽って。同年代で『一生やっていこうぜ』と言っていたやつが、どんどん辞めていったりするんです。この歳で、音楽をやっているなんて正気の沙汰じゃないので、風当たりが強かったりするんですけど。でも、僕は幸せに興味があまりないので。僕は辞めないから、『少なくともひとり確保できてよかったね』って思います。みなさんがいる限り、ずっと音楽をやり続けますから」。

秋山黄色が盟友・緑黄色社会と紡いだ愛とリスペクトによる「かけがえのない時間」──対バンツアー「BUG SESSION」全3公演徹底レポで、秋山黄色の表現の本質をひもとく! Part 1・Zepp Osaka Bayside編
言葉の一つひとつによっても観客たちの心を突き刺し、熱を高めていく秋山。「俺、もうこんなんだぞ!」とギターをかき鳴らして獰猛な獣の雄叫びのような音を響かせる。その音で、喜びとか、興奮とか、いろんなものが混ざり合っているのであろう感情を露わにする。彼はいつだって本当に剥き出しで、だから、目が離せない。

秋山黄色が盟友・緑黄色社会と紡いだ愛とリスペクトによる「かけがえのない時間」──対バンツアー「BUG SESSION」全3公演徹底レポで、秋山黄色の表現の本質をひもとく! Part 1・Zepp Osaka Bayside編
カメラのシャッター音とフラッシュのような強烈な照明が瞬き、“シャッターチャンス”が始まると、秋山はハンドマイクでドープなビートに乗せて言葉を紡いでいく。観客たちも巻き込んで「バーン!」と叫ぶ。その光景を「一体感」と言葉にするのは乱暴すぎる。秋山黄色は、もっと緻密に、繊細に、一人ひとりに叫びがあることを知っている。そして“SCRAP BOOOO”へ。強烈なビートと鋭利なギターを重ねて、秋山黄色は彼にしかできないやり方で、忘却ではない形での痛みへの治癒を試み、光へ歩いていく歩調を他の誰かと分かち合おうとする。

秋山黄色が盟友・緑黄色社会と紡いだ愛とリスペクトによる「かけがえのない時間」──対バンツアー「BUG SESSION」全3公演徹底レポで、秋山黄色の表現の本質をひもとく! Part 1・Zepp Osaka Bayside編
中盤のMCでは、この対バンツアーへの思いを言葉にする場面もあった。今回の対バンツアーは、自主企画としては2019年にFINLANDSを招いて開催した「秋山黄色 2MAN LIVE "Encounter"」以来のツーマンライブとなる。自身の対バン形式のライブの少なさについて秋山は「ツーマンライブをするイメージが湧かないんです。それは僕の人間性やアーティスト性にも関わってきているものです」と語る。だからこそ、この対バンツアーがどれほど大切なものかを伝えるために、彼は「BUG SESSION」に込めた秘密を言葉にする。「言葉を濁さずに言うと、特別なんです。かけがえのない時間なんです、今は。だから今日はカバーもしない。お祭りみたいなノリではできないんです。カバーができないほど大切なんだっていうことが、身に沁みてわかってもらえればいいなと思います。セッションとはなんぞや、ということだけ、皆さんに教えていければいいなと思います。ただ一緒に演奏することがセッションじゃないんだよ。……『BUG SESSION』は『緑黄色夜祭』にインスピレーションを受けて作っております。あの日、『ああ、疲れたね』って、壱誓とソファに腰掛けました。会話が弾まないんです。アルコールでは味わえない、ライブでなくちゃいけない『酔い』が、確かにあったんです。あの感覚をみんなにも味わってもらわないともったいないと思って、『BUG SESSION』を作りました。BUGって虫のことじゃないぜ。エラーのことを言うの。俺みたいな存在ね」。

秋山黄色が盟友・緑黄色社会と紡いだ愛とリスペクトによる「かけがえのない時間」──対バンツアー「BUG SESSION」全3公演徹底レポで、秋山黄色の表現の本質をひもとく! Part 1・Zepp Osaka Bayside編
この記事が公開される頃にはまだ最終公演が控えているので、他の演奏された楽曲についての細かい記述は控えるが、秋山黄色の音楽が、痛みも、焦燥も、怒りも、傷跡も、どんな歪な感情も忘れることはなく、しかしそのままで、まるで大切なものを守るためのシェルターのような温かみを抱き始めていることを感じさせるライブだった。この「BUG SESSION」の果てに、秋山黄色は何を見るのだろうか。続くPEOPLE 1との名古屋公演について、そして東京公演についても、追って書き記していきたいと思う。(天野史彬)

秋山黄色が盟友・緑黄色社会と紡いだ愛とリスペクトによる「かけがえのない時間」──対バンツアー「BUG SESSION」全3公演徹底レポで、秋山黄色の表現の本質をひもとく! Part 1・Zepp Osaka Bayside編


秋山黄色presents 「BUG SESSION」
2024.4.4 Zepp Osaka Bayside

●緑黄色社会/セットリスト
01. ナイスアイディア!
02. Mela!
03. サマータイムシンデレラ
04. ずっとずっとずっと
05. Party!!
06. キャラクター
07. 花になって
08. 始まりの歌

●秋山黄色/セットリスト
01. やさぐれカイドー
02. Bottoms call
03. 燦々と降り積もる夜は
04. シャッターチャンス
05. SCRAP BOOOO
06. PUPA
07. モノローグ
08. Caffeine
09. アイデンティティ

Encore
10. ソニックムーブ
11. とうこうのはて

Part 2・Zepp Nagoya編(w/PEOPLE 1)
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