「新たな意味」を獲得した鉄壁のロックナンバーたちが示す、[Alexandros]の現在地

「新たな意味」を獲得した鉄壁のロックナンバーたちが示す、[Alexandros]の現在地 - All photo by 河本悠貴All photo by 河本悠貴

●セットリスト
01. KABUTO
02. Forever Young
03. ?
04. My Blueberry Morning
05. Baby's Alright
06. 無心拍数
07. Kill Me If You Can
08. Kick&Spin
09. Supercalifragilisticexpialidocious
10. Stimulator
11. we are still kids & stray cats
12. spy
13. de Mexico
14. Waitress, Waitress!
15. 閃光
16. city
17. Kids
18. Plus Altra
19. Dracula La

Encore
20. MILK
21. Starrrrrrr
22. 空と青
23. ワタリドリ
24. Don't Fuck with Yoohei Kawakami


「新たな意味」を獲得した鉄壁のロックナンバーたちが示す、[Alexandros]の現在地
徹底的に重厚で苛烈な音の塊を叩きつけたのも束の間、中盤の曲調の変化にあわせてミラーボールが回りだすと幻想的ですらある白い光が場内を巡り、やがて再び放たれる業火の如きヘヴィサウンド──。初っ端から「こんな曲だっけ!?」と面食らうほどだった“KABUTO”を終えたところで川上洋平(Vo・G)が問いかける。「Are you ready Tokyo?」。当然だ、超満員のZepp DiverCityはさっきから揺れに揺れ、歓喜と興奮の歌声に満ちている。そしてその状態はここから3時間近く、一度も途切れることなく続いたのであった。

[Alexandros]が東名阪のZeppで2Daysずつ行ったツアー「NEW MEANING TOUR 2023」。どこかで聞き覚えがあるような?と思ったら、2017年のライブハウスツアーが「Tour 2017 "NO MEANING"」だった。特定のタイトルのリリースに紐づかないツアーであること、会場がZeppであるといった背景のほか、2017年と今回のどちらもライブハウスで観る[Alexandros]が最高であることを問答無用で知らしめる内容だったという点では共通している。では、当時「特に意味はなくやりたいからやっただけ」と宣言した「NO MEANING」ツアーに対し、「新しい意味/意図」と読み取れる「NEW MEANING」と銘打った今回のツアーは、どういう位置付けだったのだろうか。それは文字通り、既存のレパートリーで作りだす未体験のライブと新たな景色を提示することだったのだと思う。

「新たな意味」を獲得した鉄壁のロックナンバーたちが示す、[Alexandros]の現在地

といっても単に目新しくリアレンジした曲ばかりが並んだわけではなく、原曲とあまり変わらないものもあった。懐かしい曲も近作の曲も定番曲もレア曲も混在していたので、当然曲調も様々なのだが、音の感触や質感の部分はかなり揃えられていた印象だった。おそらく今彼らが見せたいライブ像を想定したうえで、どこにどの曲が入るのか、どの曲をどうアレンジすれば最適なのかをデザインしていったのだろう。結果、まるですべて同一作品に収まっていたかのようなスムーズな流れと、曲の並びにおける必然性がライブ全編を貫き、知っている曲ばかりのはずなのに次々と新たな顔を覗かせる、驚きと発見に満ちたものとなったのだ。

思い返せば、開演前のBGMからそれは始まっていた気がする。BGMと呼ぶにはかなり大きめのボリュームで洋楽(ロック系だけでなくDaft PunkD'Angeloなどジャンルもさまざま)がまるでDJプレイのように繋がれ、それがUnderworld“Born Slippy”の中盤に差し掛かったところで突如暗転。耳慣れた“Burger Queen”のカウントダウンSEが流れ出し、やがて現れたメンバーによる同曲の生演奏がスタート、さらに“KABUTO”のイントロSEへ繋がる。なんという鮮やかな始まり方だろう。

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白井眞輝(G)の歌うようなギターとあたたかく包むような磯部寛之(B)のベースが印象的な“Forever Young”で飾り気ないロックサウンドをストレート届けたあとは、アルバム『I Wanna Go To Hawaii.』の曲順通りに“?”から“My Blueberry Morning”を間髪入れずに演奏するという年季の入ったファン大歓喜の展開、そして一気に時計を進めて“Baby's Alright”と“無心拍数”が来た。大合唱で応えるオーディエンス。どの曲も演奏が超キレキレで完璧なON/OFFや緩急を付けてくるうえ、照明効果に至るまで寸分の狂いなく打ち込んでくる凄まじいクオリティである。“Baby's Alright”で川上の歌にリアド偉武(Dr)が完璧にビートを合わせていくシーンなど、練り上げられたグルーヴも素晴らしい。

「新たな意味」を獲得した鉄壁のロックナンバーたちが示す、[Alexandros]の現在地
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おそらく「この曲の気持ちいいところってどこだっけ?」「それを最大化するにはどうすればいいのだろう?」そんな問いと解答を徹底的に繰り返しながら、アレンジや繋ぎ方を考え抜いてこのツアーに挑んだのであろうことがよくわかったのが、ダーティーでカオティックな側面が強調された“Kill Me If You Can”や、冒頭がダンサブルに変貌を遂げた“Kick&Spin”、開幕時に流れていた“Born Slippy”をバンドで演奏してから繋がれた“Stimulator”、川上の「頭おかしくなろうぜ、東京!!」との号令のもと、光量を絞りまくったフロアにレーザーが飛び、狂おしく踊り倒した“we are still kids & stray cats”といった中盤のセクションだった。爽やかな曲調も似合うバンドだが、こういうネジの1、2本飛んでるタイプの曲も真骨頂なのだ。

クールダウンの隙すら与えないほどの勢いでひたすらアッパーな曲が続くぶん、こまめに挟まれるちょっとしたMCの度に口にしていたのは、フロアからの歓声や歌声(とヤジも)が嬉しいということだった。そういえば[Alexandros]にとっては、ライブの制限が撤廃されて以降最初のワンマンツアーである。そりゃあこれだけ容赦ないライブっぷりも頷ける。

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川上がアコギを手にOASISの“Wonderwall”を一節弾き語ったあと、その時代の影響が色濃い“de Mexico”、リアドがイントロのドラムフレーズを叩き出した瞬間フロアが沸騰した“Waitress, Waitress!”とライブは進み、気づけば終盤に。「今年やっとこの曲を本当の意味で演奏できる気がします」と前置いてから投下したのは、コロナ禍でのリアド加入以降に生まれた新たなライブアンセム、“閃光”。川上が高々と掲げたマイクスタンド目掛けてフロアから大音声が飛び、人が人の上を飛んでいく。最後は“Plus Altra”から“Dracula La”で締めくくり、ギターのノイズを撒き散らしたまま投げキッスとともにステージをあとにした。

「新たな意味」を獲得した鉄壁のロックナンバーたちが示す、[Alexandros]の現在地

いきなり回り出した赤灯とともに“MILK”で始まったアンコールはたっぷり5曲。盛大なシンガロングが起こった“Starrrrrrr”、ファイナルで初めてやるという紹介からの“空と青”まで終えたところで、トークの流れからさらっと来年秋に初の主催屋外フェスとして「ディスフェス」を行うことも発表。すでに新たな作品に取り掛かっていることも明かされた。

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そして最後の最後に演奏した、“Don't Fuck With Yoohei Kawakami”。沸点突破の狂騒の中で一旦バンドの演奏を止め、白井が弾いたいくつかの断片的なギターフレーズはおそらく、チバユウスケに捧げたものだった。そんなシーンに滲んだ、ロックを信じて人生を賭けてきたバンド・[Alexandros]の魂と矜持、さらにはこの日に目の当たりにした圧倒的なライブ力と構成力、演奏のキレキレっぷりを観てしまったらもう、「ディスフェス」にもまだ見ぬ新作にも期待しかない。(風間大洋)

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