「ありがとう、これからも末長くよろしくね!!」45周年のサザンオールスターズ、心のホームグラウンドに立つ! 茅ヶ崎ライブ2023最終日をレポート

「ありがとう、これからも末長くよろしくね!!」45周年のサザンオールスターズ、心のホームグラウンドに立つ! 茅ヶ崎ライブ2023最終日をレポート - photo by 西槇太一photo by 西槇太一

●セットリスト
01. C調言葉に御用心
02. 女呼んでブギ
03. YOU
04. My Foreplay Music
05. 涙のキッス
06. 夏をあきらめて
07. Moon Light Lover
08. 栄光の男
09. OH!! SUMMER QUEEN 〜夏の女王様〜
10. そんなヒロシに騙されて
11. いとしのエリー
12. 歌えニッポンの空
13. 君だけに夢をもう一度
14. 東京VICTORY
15. 栞のテーマ
16. 太陽は罪な奴
17. 真夏の果実
18. LOVE AFFAIR〜秘密のデート〜
19. ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)
20. 盆ギリ恋歌
21. みんなのうた
22. マンピーのG★SPOT

Encore
01. ロックンロール・スーパーマン~Rock'n Roll Superman~
02. Ya Ya(あの時代(とき)を忘れない)
03. 希望の轍
04. 勝手にシンドバッド



「ありがとう、これからも末長くよろしくね!!」45周年のサザンオールスターズ、心のホームグラウンドに立つ! 茅ヶ崎ライブ2023最終日をレポート - photo by 西槇太一photo by 西槇太一

有観客ライブとしては2019年以来4年ぶり、桑田佳祐(Vo・G)の故郷である神奈川県茅ヶ崎市でのライブとしては10年ぶり3度目となった、デビュー45周年のサザンオールスターズ「茅ヶ崎ライブ2023」。前回までと同じく茅ヶ崎公園野球場で、9月27日・28日・30日、10月1日の4日間開催(全日程が好天に恵まれた)され、会場では各日18000人を動員、後半2日間では全国の映画館でライブビューイングも開催。延べ27万人以上が歓喜・熱狂するステージとなった。本稿では、最終日となる10月1日公演の模様をレポートしたい。

開演予定時刻を迎えると、まずは茅ヶ崎育ちの先輩スターである加山雄三の“夕陽は赤く”に乗ってバンドのサポートメンバーが、続いて“君といつまでも”に乗って桑田佳祐、原由子(Key・Vo)、関口和之(B)、野沢秀行(Percussion)、松田弘(Dr)と笑顔の5人が電車ごっこで連なって登場。4カウントとともに花火が打ち上げられて華々しく演奏がスタートする。まずびっくりしたのは、ライブの音響だ。茅ヶ崎公園野球場は、海沿いとはいえ住宅の密集した地域にあるのだが、これまでのサザンライブと比較してもまるで遜色ない音質・音量で楽曲が届けられてしまう。秋口の柔らかな風に、“C調言葉に御用心”の小気味よく弾けるメロディがくっきりと伝って心地よい。

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ビートルズTシャツに身を包んだ桑田が「愛とロマンを歌うサザンオールスターズでございます」「ステージ上はちょっとした高齢者施設でございます」と沸かせながら、《ようこそここへ》《クック クック》と桜田淳子“わたしの青い鳥”から引用したコール&レスポンスを行う。オーディエンスのレスポンスの良さに気をよくしたのか、このあとにも何度もやっていた。

サポートメンバーは斎藤誠(G)、片山敦夫(Key)、山本拓夫(Sax)、吉田治(Sax)、菅坡雅彦(Tp)、TIGER(Cho)という鉄壁の布陣。一瞬で胸を満たす華やかなサウンドだし、ここぞというときには個々の見せ場も盛り込まれているのだが、余計な力みがなく滑らかに音が重なり連なってゆくさまに惚れ惚れとさせられる。まるでサザンオールスターズという一体の生き物が音楽を奏でているようで、これがデビュー45周年のバンドのコンビネーションなのか、と思い知らされた。

“YOU”、“My Foreplay Music”、“涙のキッス”と、キャリアを彩ってきたアルバム曲も大ヒットシングル曲も、すべてが分け隔てなく人生のご褒美のように鳴り響く。“夏をあきらめて”に登場する《Pacific Hotel》は、かつて実在し、桑田がアルバイトしていたことでも知られるパシフィックホテル茅ヶ崎のことだ(後に2000年の茅ヶ崎ライブに向けてシングル曲“HOTEL PACIFIC”が制作された)。

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“Moon Light Lover”では、夜の海の水面に映り込んだ満月の光(いわゆるムーンロード)の映像が美しいけれども、ビジュアル演出は音楽と歌詞の雄弁さを阻害しない絶妙なバランスをキープしている。哀愁を引き摺りながら力強く転がる“栄光の男”、原が前線に躍り出てハンドマイクで歌声を届ける“そんなヒロシに騙されて”の直後には、それまでにもメンバーそれぞれの名前を呼ぶ声がたくさん飛んでいたけれども、きっちり「ヒロシー!」のコールが響いていて可笑しい。

メンバー紹介の一幕では、桑田がノリノリでサポートメンバーを紹介した後、関口が「君の話、退屈だわ」と言葉を遮り、「サザンオールスターズの真のリーダー(関口)」、「本物のバンドマスター(松田)」、「サザンの代表取締役、最高幹部(野沢)」、「サザンの総合プロデューサー(原)」と口々に自己紹介して喝采を誘う。寡黙な関口が横槍を入れるというくだりも面白いのだが、絶好調に歌いまくっている桑田に、少しでも休憩を与えるためのチームワークでもあったのかもしれない。3ヶ月連続配信シングルの一角を担った“歌えニッポンの空”は、穏やかでありながらもハワイやカリブ、メキシカンやフラメンコ音楽の要素が融合した豊かなミクスチャー感覚に乗せて、《ここは茅ヶ崎 歌え日本の空!!》と歌詞を変えて歌われていた。

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高らかなチャントを誘う“東京VICTORY”ではオーディエンスに配布されたリストバンド型「烏帽子ライト」が一斉にブルーに煌めき、ライブ本編終盤は怒涛のヒット曲連打だ。鈴の音のイントロだけでどよめく“LOVE AFFAIR〜秘密のデート〜”、エバトダンシングチームの艶やかな活躍とともに、日本的な死生観をエロティックな特濃グルーヴで描き切ってみせた“盆ギリ恋歌”、そして「秋風が吹いてる中〜♪ 水に濡れたくないよね〜♪」と口ずさみながらも容赦無くステージ上から放水して始まる“みんなのうた”と、逃れようのない熱狂を生み出してしまう。

「やる気あんのかライブビューイング、コラーッ!!」と全力で浴びせかけられる本編ラストは、桑田による自動車のフロント部分のようなヘッドライトと「・・45」のナンバープレートにGマークを乗せた被り物(カメラも搭載)、首にかけた赤タオルとアントニオ猪木の顔真似という、もう見るからにカオスな“マンピーのG★SPOT”だ。音楽を奏でるほどに、際限なく若々しいバイタリティを漲らせてしまうサザンの魔法は、何度目の当たりにしても信じがたい。

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球場全域でウェーブを巻き起こしながらも「アンコールの手拍子が、おろそかよ?」と釘を刺されて“ロックンロール・スーパーマン〜Rock'n Roll Superman〜”でステージは再燃、烏帽子ライトが美しく揺れる“Ya Ya(あの時代(とき)を忘れない)”の後、桑田はあらためて、会場近隣住民の理解と協力に対して感謝の思いを告げていた。

JR東海道線・茅ヶ崎駅の発車メロディでもある“希望の轍”からシームレスに野沢の賑々しいホイッスルとラテンパーカッションが連なり、無数の《今 何時?》の声に塗れる“勝手にシンドバッド”で全26曲を駆け抜ける。サンバ衣装ダンサーやお神輿が賑わせるステージには「45周年本当にありがとう!!」「これからも末長くよろしくね!!」と記された横断幕も持ち込まれ、盛大な花火が打ち上げられるという完璧なクライマックスだ。出演者全員によるメイクラインのあと、桑田は敬愛するアントニオ猪木がこの日ちょうど一周忌を迎えたことに触れながら、「1、2、3、ダーッッ!!」のコールを巻き起こして、万感のステージは幕を下ろすのだった。(小池宏和)


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