UVERworld@京セラドーム大阪

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ひと言で言うなら圧倒的。このロックシーンにおいて、UVERworldがなぜ質実ともに突出した存在でいられるのか、その理由を見せつける本当に素晴らしいアクトだった。一曲一曲に、ひとつひとつの音と言葉に――もっと言うなら、一瞬一瞬の断片にどれだけの思いを刻み、届けることができるのか。しかし、そのシンプルな行動を貫き続けることはいかに難しく、いかに大事なことであるのか。4万人のCrewで埋め尽くされた京セラドームで、彼らはUVERworldの信念をまっすぐに表現し、そして見事に勝った。

2014年7月5日、この日は9回目のデビュー記念日前日だった。つまり、日付が変われば10周年への一歩が始まるメモリアルな日にこの京セラドーム公演は行われた。そのことへの思いはライヴ中のMCでTAKUYA∞は何度も話してくれる。

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18時16分、SEの音量が上がり、客電が落とされる。巨大なスクリーンに現れる「選択肢は無数」「この世界でこの人に出会うことの確率」といった文字――つまりは、「この場に集まれた奇跡」を表すセンテンスが次々と表示されていく。ラストは「同じ時代にこの6人がであう確率――1/∞」だった。そう、「6人」である。Manipulator・Saxの誠果が正式メンバーとなり、6人になったUVERworld初の全国ツアー、そして地元関西における最大規模の会場でのワンマンライヴ――言うまでもなく、この日、この場所はUVERworld史上でも最も強い意味を持つ空間だった。

そして、スクリーンが上がり、半円形のドームの中程――2階のような位置と言えばいいか――のステージに立つ6人が姿を現す。1曲目は“GOLD”。TAKUYA∞のこの日最初のひと言――「バッコリいこうぜ!」――を会場は最高のテンションで迎える。メロディを一緒に口ずさんでいる克哉(G)、集中した表情でギターかき鳴らす彰、信人&真太郎のリズムセクションは弾むようなビートをたたき出す。そして、誠果が何度もモニターに写される。このライヴの根底に流れる「6人」感が会場全体に行き渡っていく。「始まったぞー! 京セラドームでUVERがボッコボコに暴れてるところを観たいってやつが何万人いるんだ!? バッコリあがっていこうぜー!」というTAKUYA∞のMCに続いて披露されたのは“KINJITO”。凄まじいアジテーションとしてのパワーを持った楽曲だ。ラストのサビ前、誠果のサックスが大歓声を浴びている。

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“Don’t Think.Feel”“UNKNOWN ORCHESTRA”に続き、長めのMCが入る。「12年前までは、隣の隣の町で、滋賀県でたった四畳半の狭い部屋に6人で集まってこの曲を作ってたんだよ。すべてはこの曲から始まったと思っている。この曲が俺たちにくれた――“CHANCE!”」。イントロのキメに合わせて銀テープが噴射される。音楽的な観点で言うと、今現在のUVERworldのそれと比べるとずっとポップ寄りで爽快なこのナンバーだが、しかし「言っていること」は驚くほどに変わらない。この曲を聴くとそのことが本当によくわかる。

ここで、恒例の真太郎のMCに突入。「みなさん、グローブ持ってきましたか、ここ野球するところなんですよ――僕はグローブ忘れました。バットとボール2個しか持って来ませんでした。女性はちゃんとキャッチャーミット持って来てますよね、縦に構えた……」――すると、TAKUYA∞が「そのバットもボールも出させねえからな!」とツッコミを入れる。という最高の雰囲気のなか、真太郎は「そんなUVERworldに誠果が戻ってきました!」と叫び、次なるブロックへとなだれ込んでいく。

Tシャツを脱いだ真太郎がドラムソロを叩き出す。そこに絡むTAKUYA∞の口笛――“7th Trigger”である。TAKUYA∞が歌い上げるヴァース部分では大きなハンドクラップが巻き起こり、“ace of ace”“浮世CROSSING”の合唱によって、会場はいよいよ一体感を増していく。時にオーディエンスを指差し、時に天を指すTAKUYA∞のアクションが完璧にきまっていく。曲の流れ、メロディの流れに導かれるように繰り出されるそのアクションの美しさはこの日、やはり特に際立っていたように思う。

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タオルがぐるんぐるんと回された“ENERGY”に続き披露されたのは、先日発売した8枚目のアルバム『Ø CHOIR』のオープニングナンバーでもある“IMPACT”。ここで新型ペンライトシステム「FreFlow(フリフラ)」が光り出し、観客をダイナミックに彩っていく。《世界の中心は 今立つその場所》――というフレーズがバンドとひとりひとりとの契りを強めていく。

“REVERSI”“LIMITLESS”が終わったところで、TAKUYA∞のイヤモニが不調なようでスタッフが背中から配線を変えようとする――と、「おい、やめろよ(笑)」とむずがるTAKUYA∞。「タオル回した曲(ENERGY)あたりからこれ(イヤモニ)がつぶれててさ、聴こえなくてさ……俺、ずっとひとりだったんだぜ」という言葉に会場が沸きに沸いている。続いて、“23ワード”。会場のスクリーンがモノクロの映像に変わり、どこかセンチメタルでノスタルジックな空気が漂い出す。曲間、TAKUYA∞は無数のハンドウェーブを眺めながら、「歌えないやつは心の中でどうか歌ってくれ!」「まだまだカッコいい姿、見せてやるからな!」と言った。

「とっても楽しいんだよ、今。曲を作っても、ツアー回っても、とても楽しい。インディーズ時代の、結成した時に戻ったみたいにツアーを回れてる。楽しいからさ、移動とかもレンタカー借りてさ、俺運転してんだよ。ほんとだよ? でもさ、それが楽しいんだよ。だからさ、楽しいものを守りたいからさ。今日も素敵なライヴにしなきゃって思ってるんだよね」といって映し出されたのは信人。穏やかな笑いが会場に広がる中、「みんなもいるでしょ、君が哀しい顔をしたら哀しんでくれる人、いるでしょ。大切な人をを哀しませないためにも、今日最高に笑って過ごしましょう。俺たちの始まりの合唱」。そして“Ø choir”の立ち上がりの言葉をTAKUYA∞が歌い出す。スクリーンには街の風景が映し出され、そこにひと言ひと言、歌詞が現れる。これが本当に感動的だった。「それぞれの大切な人の代わりはいない」「人生が100年だったとして、70億人なら、ひとり一秒ずつ出会ったって全員には出会えない」――このメッセージを攻撃的にではなく、ひとりひとりの悩みや現在を包み込むように伝えようとするのが今のUVERworldである。そして、『Ø CHOIR』とはそういうアルバムなのだと思う。

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“THE OVER”では、6人はサブステージで演奏し、“Massive”では楽器隊の5人がメインステージの反対側のスタンド席前に等間隔に広がり、まさにマッシヴでアタッキングなビートを空間に突き刺していく。続いて、メインステージにはドラムパフォーマンス集団、鼓和-core-が登場。小気味よいリズムパフォーマンスに合わせ、自然と広がってく手拍子。センターステージには数々の打楽器がセットされている。“Wizard CLUB”だ。全員でプリミティヴなビートをたたきつけ、続いて“6つの風”、そして“Born Slippy”が繰り出される。

「京セラドームでライヴができるはずがないって言われたけど――成功した途端、手の平を返す者たちに告ぐ――俺たちが“NO.1”」。ここからが本当のクライマックスである。言うべきこと、歌うべきこと、届けるべき思いだけが詰まった時間になっていく。

続く、この日の21曲目は、“CORE PRIDE”だった。ファイティングモード全開のイントロが鳴り響き、TAKUYA∞がリリックを絡めていく。ガッと天を指差すTAKUYA∞の指先をモニターが見事にとらえる。ラストのメロディをいつの間にか会場中が大合唱している。この「熱さ」「思い」を共有できる4万人というのは、まさに「Crew」と呼ばれるにふさわしいとしかいいようがないだろう。そして、“ナノ・セカンド”だ。会場を揺らすデジタルビート、4万人のジャンプ。《本気は痛みを厭わない》というフレーズが4万人の本気を打ち抜いていく。濃く、深く、熱い空気、歌詞のひとつひとつが、全開になった心にそのまま飛び込み、そして残っていく。そんなほぼ放心状態のオーディンエンスにTAKUYA∞は語りかける。

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「日付が変わると、10年目の第一歩を俺たちは踏み出すんだよ。素敵な曲をたくさん書くよ。ライヴで盛り上がる曲もいっぱい書くし、みんなに届くようなメッセージのある曲もたくさん書くよ。俺、目一杯生きようと思ってんだよ、もう。失ったものを追いかけて曲を書くんじゃなくて、これからの出会いや期待に満ち溢れながら曲を書いていこうと思ってる」――。続いてこう語る。「あれはもう5、6年前の話だよ。学園祭ツアーで愛媛にいった。その合間に、俺と真太郎は温泉に行くんだよ。ふたりで服を脱いでんだ。すると、脱衣場でおじいさんが一緒に服を脱ぎ出すの。俺にいろいろ話しかけてくるんだ。年齢を聞いたら76歳だった。俺、そのおじいちゃんにどうしても聞きたくなって聞いちゃったんだよ。『おじいちゃん、死ぬのって怖いことなの?』って。そしたらさ、こう言ったんだよ。『ああ、まだまだ死にたくないねえ、こんな素敵な世界だから』っつったんだよ。俺、それすっげえ嬉しくてさ。俺も言ってたいんだよ、76歳になったときに、まだまだ死にたくない、素敵な世界だからって言ってたいからさ。76歳のおじいちゃんに6年前に出会って、この6年間で大切なものと大切な人を見つけてきた。そういう人たちを哀しませないように、もっともっと楽しく、前向いて生きていこうって決めた。それが俺たちの“7日目の決意”」――シンバルが鳴り始め、《君は冬の夢を見てなく蝉/もしその願いが明日叶うと知ったら 7日目を生きたのかい?》というフレーズをTAKUYA∞が歌い出す。4万人がじっと聴き入っている。まさに「76歳のおじいさんとの会話」と思しきやり取りが引用されるこのバラードが今このタイミングで鳴らされることで生まれる説得力は凄まじい。まさに今のTAKUYA∞だから、6人だから歌うことができた曲であり、9年もの歴史をともに重ねてきたCrewだからこそ、この曲に込められている思いがストレートに響いてくる。モニターに映し出されていくメンバーが全員、TAKUYA∞と一緒に歌っている。珍しくTAKUYA∞の声が上ずる。それもまた、熱として本気の心の有り様として伝わってくる。

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ライヴはいよいよラストの1曲へ。「4年前の東京ドームでは、俺はテンパりすぎて、みんなに感謝の気持ちを伝えずにステージを下りていった。そんな失敗、もう二度としないと思ってさ。俺たちと一緒に京セラドームの夢を叶えてくれてありがとう。俺たちの音楽を愛してくれてありがとう。最後、最高に笑って終わろうぜ!」と言って始まったのは“MONDO PIECE”。モニターにはエンドロールが流され、メンバーがひとりひとり紹介されていく。巨大なシンガロングが起こり、センチメンタルなメロディが最高のアンセムとして鳴り響いていく。すると、モニターには次なるツアー(8月20日から2015年1月まで開催される 『Ø CHOIR TOUR 2014-2015』)の日程が掲出され、Crewは大歓声をステージの6人に投げ掛ける。

「ありがとうございました。まだまだこれから始まる俺たちの、6人での旅、チームUVERworld。新しい時代に足跡をつける、俺たちがUVERworldだ! よろしく!」。この日、TAKUYA∞が叫んだ最後の言葉は、そんな10年目の「宣言」だった。

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しかし、どこまでこのバンドは大きく、強くなっていくのだろうか。そして、その止まることのない歩みを支えている思いのなんとシンプルなことだろうか。もはやこれがロックであるのか、J-POPであるのか、ミクスチャーロックであるのか――そんな各論をすべて無化させるように信念を持って鳴らされるただただオリジナルな旋律と、誰にも似ていない、だが誰にでも共有する普遍的な思い。それだけを刻み付けたこの尊い音楽が進む道をまだまだ目撃し続けていたい。圧倒的な説得力で4万人にそう実感させる、本当に素晴らしい一夜だった。

さらに熱く、JAPAN9月号でも書きますので、そちらもぜひ読んでください。(小栁大輔)

■セットリスト

01.GOLD
02.KINJITO
03.Don’t Think.Feel
04.UNKNOWN ORCHESTRA
05.CHANCE!
06.7th Trigger
07.ace of ace
08.浮世CROSSING
09.ENERGY
10.IMPACT
11.REVERSI
12.LIMITLESS
13.23ワード
14.Ø choir
15.THE OVER
16.Massive
17.Wizard CLUB
18.6つの風
19.Born Slippy
20.NO.1
21.CORE PRIDE
22.ナノ・セカンド
23.7日目の決意
24.MONDO PIECE
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