日経ライブレポート「マックルモア&ライアン・ルイス」

今年1月のグラミー賞では、最優秀新人賞を含む4部門で受賞。シングル「スリフト・ショップ」は昨年の全米シングル・チャート年間1位。まさに、今最も勢いのあるアーティストだ。ラッパーのマックルモアと、プロデューサーであるライアン・ルイスの2人によるヒップ・ホップ・デュオ。分かりやすい言葉と、分かりやすいメロディー、それを素直にてらいなく表現する姿勢が多くの支持を集めた。

いわゆる玄人受けするタイプではない。グラミー受賞のときも、自分達の受賞に驚き、もっとふさわしいアーティストがいたとコメントしていたが、謙遜というより本当にそう思っていたのだと思う。そして、それを自然に口にすることができるのも、彼らの魅力だったりする。

ライヴで叩き上げてきただけに、ステージはとても良くできたエンターテインメントだった。ダンサーやゲスト・ヴォーカルも参加し、一曲毎に飽きさせない演出がある。
しかし彼らを特徴付けているのはMC、ステージでの喋りだろう。セックス、ドラッグ、メイク・マネーが主要テーマとなっているアメリカのヒップホップ・シーンにあって、彼らのメッセージは異色だ。それは一種の人生応援歌、頑張ろう、夢を持ち続けよう、前向きに生きようといったものだ。それを歌だけでなく、ステージのMCでも訴えかける。日本のヒップホップではお馴染みの人生応援メッセージだが、ここまで強く打ち出したのはアメリカでは初めてではないだろうか。

日本盤が出ていないのにもかかわらず追加を含めて公演は売り切れ。明らかに言葉を理解したと思われる観客の反応も、とても熱かった。

3月26日、渋谷AX
(2014年4月9日 日本経済新聞夕刊掲載)
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