ビーバドゥービー、アメリカに上陸!! Z世代のフロント・ランナーが鳴らす、グランジの“やさしさ”とディストーションの“せつなさ”

ビーバドゥービー、アメリカに上陸!! Z世代のフロント・ランナーが鳴らす、グランジの“やさしさ”とディストーションの“せつなさ” - rockin'on 2022年1月号 中面rockin'on 2022年1月号 中面

NY市では1年半以上ライブの開催が停止していたが、9月以降徐々に再開。11月になるとUKバンドが一斉に北米ツアーを開始した。ビーバドゥービーも『フェイク・イット・フラワーズ』ツアーを11月から北米で決行。

11月4日にはNYのウェブスター・ホール(キャパ1500人)でとうとうライブを行なった。観客は、この日が来るのを待っていたと言わんばかりに、最初から最後まで嬉しそうに飛び跳ねながら大合唱。その光景を見ているだけで、こちらも幸せになる、なんとも尊いライブだった。

まず驚いたのは、観客の90%近くが20歳前後の女子で、始まった瞬間から歓声が甲高かったこと。その後の合唱も同様だった。1曲目は、彼女自身が自分はどんなアーティストなのかを象徴していると言っていた"Sun More Often"。予想以上に初期のスマッシング・パンプキンズっぽいというか、彼女自身はペイヴメントの大ファンなので、ペイヴメントっぽいと言った方がいいかもしれないが、90年代のオルタナ・サウンドを彷彿とさせた。

ただ、終わりまでそうだったけど、それが重くなりすぎる瞬間がなくて心地よく鳴り響き続けたのがより新世代的で、今っぽくて最高だった。続く"Care"はキャッチーなドリーム・ポップで、"Sorry"ではニルヴァーナソニック・ユース的なディストーションがアウトロで鳴り響いていた。それもその場を破壊するようなサウンドではなくて、どれも今の我々の心の傷や重さに寄り添ってくるような、ふんわりと包み込むような新解釈。それが、優しく心を持ち上げてくれるようだった。

全体的には、『フェイク・イット・フラワーズ』の大半が演奏され、コロナ禍にThe 1975とコラボした『Our Extended Play』からも演奏する、最新にしてベストな内容。本編の最後は、"Last Day On Earth"で、甘美さと切なさが炸裂し、まるで未来への不安を解きほぐしてくれるようだった。

アンコールではアコギを抱えて1人で戻ってきて「17歳の時に書いた曲なの」とブレイクするきっかけとなった"Coffee"を演奏。この日最大の合唱となった。最後は最新の"Cologne"で締めくくり。21歳の彼女の音楽的飛躍を感じさせた。

観客は、まるでコロナ禍で彼女の曲に支えられてきたかのような熱狂で、今の儚さも幸せも噛み締めながら、覚めたくない夢を見ているような空間を作ってくれた。(中村明美)



ビーバドゥービーの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』1月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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