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最終日の夕刻を迎え、陽が沈みかけたここGRASS STAGEも残すところあと2組……という寂寞感漂う空気が、スピッツの弾むようなバンド・サウンドが鳴り響いた瞬間に雲散霧消し、「スピッツが2年ぶりにROCK IN JAPANに、GRASS STAGEに登場!」というめくるめく高揚感が広がっていく。そして、草野マサムネのマジカルな歌が1曲、また1曲と空に舞い上がっていくたびに、満場のフィールドの歓喜の色が刻一刻と強く濃くなっていくのがわかる。「夕暮れ時のいい時間をいただいて、ありがたいと思うんですけど……朝から大変だったでしょ? ケツメイシの時もみんなノリノリだったから。体力温存しておいてくれてありがとう! 嬉しいぜ!……本当は『嬉しいぜーっ!』って叫びたいんですけど、次の曲に支障が出るんで(笑)」というマサムネのMCも、そんな多幸感に拍車をかけていく。
草野マサムネ/三輪テツヤ/田村明浩/﨑山龍男&サポートKey:クジヒロコのアンサンブルが腕白ワイルド・サイド・オブ・スピッツの極致的なドライブ感を見せた、『とげまる』収録曲“恋する凡人”。涼やかな歌声とアコースティック・ギターの響き越しにポップの宇宙を描き出す“スパイダー”、目映いばかりのメロディがオーディエンス数万人丸ごとでっかいハンドウェーブへと導いた“空も飛べるはず”など90年代シングル曲群。さらに今年リリースされたスペシャル・アルバム『おるたな』からの選曲……結成から今年で25周年を迎えるスピッツの歴史を、ここひたちなかのステージに結晶させたような、実にカラフルで味わい深いアクトだ。「オリンピック見てる? 内村航平くん、すごいですよね。もう、同じ人間と思えないくらい。で、内村くんに負けないもの何かないのかな?って思ったんだけど……声の高さは負けないかなって(笑)」と、突如クリスタルキング“大都会”の一節を、あの超ハイトーン・ヴォイスで歌ってみせたマサムネ。「……内村くんみたいに高く跳べないけど、声でみなさんを高く跳ばせたらいいなと思います!」の言葉に、ひときわ熱い拍手と歓声が沸き上がる。
時にセンチメンタルに、時に衝動に身を任せながら、GRASS STAGEの夕空とでっかく響き合ってみせたスピッツ。「ROCK IN JAPANは何回も出さしてもらってるけど、今日はほんと気持ちいいです! みなさん、大好きです! みなさんにとって最高の夏になるように祈ってます」……終盤のMCでマサムネが見せた充実した表情が、この日の最高のライブを何より象徴していた。(高橋智樹)