トム・ヨーク、スポティファイと闘っていかなければならない理由を語る

トム・ヨーク、スポティファイと闘っていかなければならない理由を語る

今年の7月に若いアーティストのためにならないとしてスポティファイから音源を引き上げたレディオヘッドのトム・ヨークは、持説をさらに展開していて、スポティファイの印税率のあまりの低さについて「誰かが何かを言わないと。新しい音楽のためにならないよ」と語っている。

トムとナイジェル・ゴドリッチは7月にアトムズ・フォー・ピースの音源をすべてスポティファイから引き上げていて、その後、トムはソロ作品『ジ・イレイザー』の音源とナイジェルは自身のプロジェクト、ウルトライスタの音源も引き上げているが、その際、ナイジェルとトムはツイートでスポティファイの提示する条件では、とても若いアーティストはやっていけないと批判していた。その後、ユーリズミックスのデイヴ・スチュワートはスポティファイはなにか方策を考えてみせただけマシだと反論し、トム・ヨークはスポティファイを拝むべきだとも批判している。

こうした動きに対してトムはメキシコの音楽サイト、ソピタスに次のように語っている。

「人々の音楽の聴き方が大きな転換期を今経験しているように思えるんだよね。ミュージシャンとして僕たちはこのスポティファイ的なものと戦うべきだと思うんだ。ある意味で、今メインストリームで起きていることは、古い業界の最後のあがきのように思えるんだよ。それが最終的に死ぬと――いずれ死ぬんだけど――何か別なことが起きるんだよ。僕たちがこの先音楽の聴き方をどう変えるのか、テクノロジー的に次に何が起きるのか、人々が音楽についてお互いにどう語り合うのか、すべてそういうことと関わり合ってることなんだけど、そうやって新しくできるものの多くが最悪なものである可能性もあるんだ。だけど、音楽業界の多くの人たちが同意しているように『もうこれしか手はないんだ。これをやるしかないんだ』っていうことに僕は加担したくないんだ。とにかく、僕にはこれは同意できないんだよ」

「僕たちが『イン・レインボウズ』をやった時に一番刺激的だったのは、ミュージシャンとしての自分とオーディエンスが直接繋がり合えたということだったんだよね。途中にあったものを全部取っ払って、これとあれしかいなくなったわけなんだよ。それなのに、いきなりバカ野郎どもがしゃしゃり出てきて、スポティファイみたいにこのプロセスの門番気取りになってるんだよ。おまえにやってもらう必要なんかないんだよっていうね。アーティストの誰もお前を必要とはしてないんだよっていうさ。そんな仕組みはアーティストでも充分作れるんだから、消えろよっていうもんなんだよ。だけど、連中は古い音楽を使っているから、メジャー・レーベルの作品を使っているから、メジャーも全部乗っかっちゃってるわけで、というのはメジャーは元手なしで古いものを売り直すことができるわけで、それで一儲けして、死に絶えなくて済むというわけなんだ。だから、このスポティファイに関することはすべて僕には大戦なんだよ。音楽の未来がかかっているからね。音楽にまだ未来はあると信じるかどうかという、そういう問題なんだ。それは映画についても言えることだし、出版についても言えることなんだよ」

「だから、これは僕にはまったくメインストリームなことではないんだ。むしろ、最後っ屁みたいなもんだよ。死にゆく屍体の最後っ屁だよ。この次に何が起きるかが重要なことなんだ」

また、トムはマッシヴ・アタックのコラボレーターとして知られるアダム・カーティスと会話した際に「俺たちは今、もしありとあらゆるクリエイティヴィティが停止すると、過去が未来に情報を与え、他の未来がありえなくなるという、そんな時代に入りつつある」という話になったとも語っていて、次のように心境を述べている。

「いや、『まったくその通りだよ』っていうさ。僕たちとか、アダムとか、マッシヴ・アタックとか、こういう人たちが共闘しないとだめなんだよ。ふざけろよ、まだ終わっちゃいないんだってね。なんかみんな暗示にかけられているんだよ、『テクノロジーについてはこの先、すべてがひとつのクラウドになって、クリエイティヴィティはすべてひとつに統合されて、誰もお金は貰わなくなって、巨大な知的なものとなる』っていうさ。嘘八百もいい加減にしろっていうんだよ。もうね、僕の場合、これについて考えないことの方が難しいんだよ。というのは、僕にとって音楽でこれほど重要なことって……っていうか、活版印刷が発明されて以来の事件だと思うからさ」
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