【コラム】MIYAVI×SMAP、2度目の共演を機に考える「後天的進化論」とは?

【コラム】MIYAVI×SMAP、2度目の共演を機に考える「後天的進化論」とは?

世間的には「『SMAP×SMAP』2回目の出演」ということになるのだが、その演奏は昨年9月の初登場の時よりも強いインパクトと感激を与えるものだったし、実際そう感じた人は少なくないと思う。かつてのトレードマークだったエレアコのスラップ奏法ではなく、新たに白のテレキャスを身体の一部のように操る「MIYAVI最新型」のプレイスタイルが描くしなやかなエッジ感。《WE ARE THE OTHERS(俺たちは 皆 それぞれ違う)》と歌う最新AL『The Others』のタイトル曲“The Others”が響かせた、どこまでも開放的なスケール感。何より、日本から海外ロックシーンに斬り込む異端児=「サムライギタリスト」ではなく、ホームもアウェイも踏み越えて音楽を発信するMIYAVIの「今」を、短い時間ながらその映像はダイレクトに伝えてきた。

SMAP“青いイナズマ”とMIYAVI“Real?”、そしてMIYAVIからSMAPへの提供楽曲“Top of the World”を披露した前回出演に続き、8月17日放送の『SMAP×SMAP』では同番組2度目の実現となったMIYAVI×SMAPスタジオライヴ共演。映画『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』の日本版テーマ曲=“Mission:Impossible Theme”をストリングスカルテットとともにテレビ初披露したほか、MIYAVI曲“The Others”、さらにSMAPの“$10”を、MIYAVI&BOBOの鉄壁コンビとSMAPとのコラボレーションによって熱演してみせた。2010年再デビュー前の「武者修行」としての渡米ではなく、生活と音楽の拠点そのものをアメリカに移し、「世界の一員として世界を震わせる」表現へとシフトしたMIYAVIのモードが、世界的ヒットムービーと日本のポップミュージック体現者=SMAPの惑星直列を生んだ、あまりにも鮮烈な名場面だった。

「(野球で)ピッチャーに『面!』って竹刀で殴りかかっても、『何お前?』なわけじゃないですか(笑)。でも、それがある種、向こうでの日本の音楽の受け入れられ方だった気がするんですよ。ヴィジュアル系もアイドルも含めて、日本の音楽はいろんなマーケットを築いてきたけど、そうじゃない、せめてバッターボックスに立とうよって」(『ROCKIN'ON JAPAN』2013年7月号)

世界デビュー盤『MIYAVI』についてインタヴューした際、日本と世界(特にアメリカ)の音楽シーンの位置関係について、MIYAVIはそんな言葉で説明していた。これまで何度もワールドツアーを回り、世界と日本との格差を肌で感じてきた彼は、楽曲やアレンジといった自らの音楽的パーツを再構築し、ついには「サムライギタリスト」という看板すら凌駕する音楽的革新を『The Others』で証明してみせた。「いちギタリストとして世界で勝つ」から「世界のスタンダードになる」への進化は、紛れもなくその楽曲に結晶している。

MIYAVI - The Others

「僕、いつか何かを成し遂げた時に、自分のデビューした時の映像と比べてみたいですよね。『一世代で人間はこれだけ進化できるんだぜ』って。進化論ですよ、MIYAVI流・後天的進化論(笑)。みんな先天的なところで物事を決めるでしょ? (中略) 英語自体搭載されてなかったですから、それをインストールするところから始めてるんで(笑)。最初からジェットエンジンで飛べてる人のほうがいいに決まってるけど、かと言って『ジェットエンジンないから諦める』っていうのは違うと思う」(『ROCKIN'ON JAPAN』2015年5月号)

『The Others』時のインタヴューで、自身の足跡をこう振り返っていたMIYAVI。「自分をボコボコにしてくれるような何か」を求めてアメリカへ渡った彼は、その誠実なミュージシャンシップゆえに、すでに完成しつつあった「MIYAVI像」を壊すに至った。そして、今回の『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』とのコラボを実現させた彼は、さらに遠く「その先」を見据えている。日本のロックシーンを丸ごとリフトアップするような彼の意志は、『SMAP×SMAP』オンエア最後に少しだけミュージックビデオが公開されたMIYAVI作曲のSMAP新曲“Otherside”(9月9日リリースの両A面シングル『Otherside/愛が止まるまでは』に収録)にも焼き込まれている。8月の「908 FESTIVAL in OSAKA 2015」出演に続き、9月27日からはヨーロッパツアー「MIYAVI Tour 2015 "WE ARE THE OTHERS" -EU leg」がスタートする。MIYAVIの壮大な闘いは、まだまだ始まったばかりだ。(高橋智樹)
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