ファン. @ 新木場スタジオコースト

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ファン. @ 新木場スタジオコースト
先ごろの『第55回 グラミー賞』では主要4部門のうち「最優秀楽曲賞」+「最優秀新人賞」の2部門受賞という快挙を成し遂げたファン.、この上ないホットなタイミングでの再来日公演である。今回の会場は、昨年7月の初来日公演(渋谷duo MUSIC EXCHANGE)に比べて数倍スケールアップした新木場スタジオコーストであるものの、バンドの状況は肥大化する一方だからしてフロアは文字どおりのすし詰め状態に。寒風吹きすさぶなか駆けつけたオーディエンスの期待感は、早くもはち切れんばかりだ(以下、ライブの詳細に触れていくので、大阪&名古屋公演に参加される方は閲覧にご注意を――)。

ライブは1時間強の本編とアンコールを加えて約1時間半。それは、バンド名のとおり、ひたすら「楽しい!」に終始するような圧倒的なまでのエンタテインメント・ショーで、冒頭から場内の沸点はほとんどマックスに達してしまったほど。定刻から20分ほど遅れての幕開けだったのだけれど、その間にもオーディエンスの興奮はじりじりと高まり、サポートメンバーの3人に続いてファン.が登場するや、何かが弾けたように沸き上がる大歓声! 再会を慈しむように、バンドは穏やかな“Out on the Town”でゆっくりと、しかし力強く会場をひとつに繋いでいき、ファンファーレのような“One Foot”と共に色鮮やかな祝祭感がスパーク。「トーキョー! プット・ユア・ハンズ・アップ!!」とボーカルのネイト・ルイスが叫んでフロア一面に腕が突き上がり、ギターのジャック・アントノフも最前線に歩み出てオーディエンスを煽る。ステージ左手のアンドリュー・ドストは、キーボードを奏でる傍らトランペットなどもプレイ。総勢6人での生命力そのもののようなバンド・アンサンブルと、ネイトの高らかに飛翔するハイトーン・ボーカルが有無を言わさぬ享楽性で観る者に迫り、声を限りに歌わずにはいられない。とにかく無性に楽しい。

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最初のMCでは、「アリガトウ! ウィー・アー・ファン.デス!」と日本語も交えて挨拶し、ネイト本人も楽しくって堪らないと言ったように何度も手を叩いて、「ユー・ガイズ・アー・アメイジング!」とオーディエンスを称賛する。客席からの「ユー・アー・セクシー!」の声には「僕らみんなセクシーだろ?(笑)」当意即妙に切り返し、別の場面では我が国が誇るトリオ芸人の「ヤー!」を息もぴったりに披露するなど、スノッブなところが一切なく、フランクな彼らのアティチュードによってフロアとの親密度はさらに上昇。秀逸な楽曲と共に、そんな彼らの飾らないキャラクターも、これだけの支持を勝ち得る要因のひとつだと思う。そのMCに続いて「オーオーオ!」とネイトの指導で合唱練習が執り行われ、“At Least I'm Not as Sad(As I Used to Be)”をみんなでシンガロング。そして“All Alone”→“It Gets Better”と曲を重ねるごとに会場の熱量は天井しらずに高まっていく。

ファン. @ 新木場スタジオコースト
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とにかく、ネイトの天を突くような声量は圧倒的で、聴いているだけである種のカタルシスを感じてしまうほど。彼のトレードマークとなりつつある力強く腕を突き上げるポーズをはじめ、アクションもいちいち雄弁かつダイナミック。その姿は時にアジテイターのようであり、時に喜劇役者のようであり、終始一貫してメッセンジャーであり、本当に非凡なボーカリストでありエンターテイナーだと思う(「フジ・ロックに出るよ!」と公式発表を前にリークしちゃったことも、人を喜ばせたいという彼の天性ゆえ?笑)。

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終盤のハイライトは、なんといっても“Carry On”、“We Are Young”とキラーチューンで畳み掛けたひと幕。前者“Carry On”では、勇ましいシンガロングとビートが高らかに響きわたり(マイクスタンドを突き上げるネイトに合わせてフロア中がハンズアップ!)、言うまでもない後者の大アンセムでは、冒頭から割れんばかりの大合唱が発生。世界を丸ごと肯定するような輝かしいハピネスが場内に溢れ出し、無尽蔵の多幸感でオーディエンスを包んでみせた(本編ラストにはローリング・ストーンズの“You Can't Always Get What You Want”をしっとりと披露!)。さらにアンコールでは、登場するなり“Some Nights”を壮大なオーケストレーションで奏で、「オーオ、オウオーオ、オウオーオ!」というスタジオコースト一丸の雄叫びで再び会場の一体感はマックスに――。今、この瞬間を目いっぱいに謳歌するような、ポップミュージックにしかなし得ないマジックを存分に堪能させてくれた掛け値なしの快演だった。早くも夏のフジ・ロックでのカムバックが待ち遠しくてたまらない。(奥村明裕)
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Out On The Town
One Foot
All The Pretty Girls
Why Am I The One
At Least I'm Not As Sad (As I Used To Be)
All Alone
It Gets Better
Barlights
All Alright
The Gambler
Carry On
We Are Young
You Can't Always Get What You Want (The Rolling Stones Cover)
(encore)
Some Nights
Stars
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