ストレイテナー×the HIATUS @ 新木場スタジオコースト

ストレイテナー×the HIATUS @ 新木場スタジオコースト - the HIATUSthe HIATUS
ストレイテナー×the HIATUS @ 新木場スタジオコースト - ストレイテナーストレイテナー
「今日で最後なんで、すごく寂しいんですけど。うまいことカッコいい言葉が浮かばないんですけど、1つだけ…………またやろう!」。この日のアンコールで発したストレイテナー・ホリエアツシの言葉が、この日の会場の気分を最も代表していたと思う。11月18日の初日@横浜BLITZの模様もこのコーナーでお伝えした、ストレイテナー×the HIATUSの対バン・ライブハウス・ツアー=『BRAIN ECLIPSE TOUR』も、今日のスタジオコーストでいよいよファイナル! ともに日本最高峰のロックのダイナミズムと輝度とポテンシャルを持ったバンド同士の真っ向対決は、ファイナルに至っていよいよ頂上決戦の様相を呈していて、終わった瞬間に「このまま急遽追加公演で武道館とか横浜アリーナとかへ雪崩れ込めないものだろうか?」と本気で期待してしまうだけの、壮絶なロックの熱量を放射しまくっていた。

 今日の先攻はthe HIATUS。“Curse Of Mine”で会場の空気を赤黒く染め上げ、“Storm Racers”で一気に成層圏まで急上昇!……という序盤の展開をはじめ、“堕天”と“Little Odyssey”が本編に挿入されているのを除けばセットリストもほぼ初日と同じはずなのだが、それでもこの日のthe HIATUSのアクトをこうして観ていても、同じバンドのステージを観ている気がまったくしない。今年4月の初ライブ以降、ただでさえあり得ないほどの上昇曲線を描きながらライブのたびにその表現の強度と深度を上げ続けているthe HIATUSだが、たとえば“Storm Racers”の、ダークなロックのカタルシスをそのまま荘厳なシンフォニーとして鳴り響かせてしまうような圧倒的なヴァイブは、たとえ同じ編成のバンドで同じ曲をやってもthe HIATUSにしか出せないに違いない、と思わせるに十分なものだった。堀江博久/一瀬正和/masasucks/ウエノコウジのアンサンブルも、「鬼気迫る」とかいうレベルではなく、どこか神懸かったようなオーラを発しているように観えたのは僕だけではないはずだ。当然、フロアは歓喜に身を任せて終始踊り、叫び、跳ね、拳を突き上げる熱狂空間と化している。

 そして、とにかく細美の、フロントマンとして/表現者としての開けっぷりが尋常ではない。「もう、しょっぱなからアガり倒してるけど、俺たちがアガり倒してるだけじゃ満足できないので、お前らもアガり倒そうぜ!」とか「お前らはさ、『今日のライブが一生残る特別なものであってほしい』って思って来るわけじゃない? 俺たちもそれは同じなんだよね。だから、最後まで頑張ろうぜ! ……『頑張ろうぜ』ってのも変か(笑)」といつものようにフロアを煽りつつ、曲に合わせて幾度となく胸を叩き、2500人のオーディエンスを力いっぱい抱き締めるように両腕を広げ、ギターを切り裂くように腕をストロークさせ、そして身体の底から宇宙の果てまでをその声で貫くように歌う、歌う、歌う! それこそ音楽の化身のように、目映い音の洪水でフロアを満たしておきながら、「勘違いすんなよ! 俺たちのためにお前らがいるんじゃないからな。お前らのために俺たちがいるんだからな!」と至って朗らかに言ってのける細美。後のMCで「ミュージシャンっていうのは本当に幸せな人間で、音楽をやれる代償としてなら何でも我慢できるんだよね」とも言っていたが、まさに「音楽を発信すること」と「リスナーとコミュニケートすること」の両方を燃料とした永久機関的なサイクルを描きながら、誰も見たことのない高みへと昇りつつあるthe HIATUSの「今」が、最も鮮烈な形で爆発した1時間だった。最後の“Insomnia”で吹き荒れた、ギターとシンセ・ストリングスとビートの嵐のようなサウンドが、彼らの次の大きな扉の向こう側の世界を予感させるように壮麗に響き渡っていた。

 そんなthe HIATUSのアクトの熱気が濃密に残る中、後攻のストレイテナー登場! 浮き足立つことなく、まずはフロアとがっちりギアを合わせるように“CLONE”の銀河旅行のような清冽なアンサンブルでスタジオコーストの空間を満たしていく。そして“クラッシュ”の鋭利なギターが一閃! アルバム『Nexus』のオープニング曲であり、4人バンドとして生まれ変わったストレイテナーの象徴とも言えるこの曲も、この1年ですでに彼らのスタンダードとなり血肉化され、ますます切れ味と衝撃力を増して響く。大山純の堂々のロック・ギタリストっぷりも、1年前のシューゲイザーな佇まいとは大違いだ。すっかり会場の空気を支配したところで、“BIRTHDAY”のポスト・ロック核爆発のような音塊がスパークすると、オーディエンスの温度は1音ごとに高まりを見せていく。「晴れてよかったね!」とホリエのMC。その背後で獣のような仕草でフロアを煽るシンペイ。キッズの野性もたまらずうおおおお!と燃え上がる。そのまま爆裂ダンス・ロック“DISCOGRAPHY”へ突入! 瞬時にフロアが液状化したかのように、スタジオコーストは誰もが飛び跳ね踊り狂う圧巻のダンス空間に姿を変える。

 初期テナー集大成的なギター・ロックのロマンとセンチメントが渦巻くナンバー“A SONG RUNS THROUGH WORLD”に続いて、「新曲やります!」というホリエの言葉に導かれて鳴り響いたのは“Toneless Twilight”。ホリエが奏でるクリアなピアノのアルペジオの背後で轟々とロックのマグマが湧き上がり、それらすべてが絶頂へ向けて加速していくような戦慄必至のアンサンブル。そして、日向の極太ベースとピアノが妖しく絡み合いながら轟音の彼方へと突き進む“蝶の夢”……それら新旧テナーの楽曲すべてが、「4人だからできること」と「この4人にしかできないこと」の必然に満ちている。さらに、その直後のMCで「昨日は雨降ってて寒くてね。でも今日はぽかぽか陽気で……コーストが“Coast In The Rain”にならなくてよかったです」と、the HIATUSの曲名にちなんだダジャレをかますホリエの茶目っ気や、「今年もあと残りわずかなんで。あとは、フェスティが……」と肝心な告知を噛んでしまって「なんでもないです!」と慌てる姿が、堪えきれない笑いを呼んで、フロアの熱気の炎ににさらに油を注いでいく。「来年1月にシングルが出ます! カッコいいことをやり続けるので……これからもよろしくお願いします!」というホリエの言葉に、場内すべてが共犯者となったような拍手と笑顔が広がっていく。“Lightning”のエレピの秘めやかな響きと、“ネクサス”最後の音響ギターの輝きと、“Melodic Storm”のエモーション大爆発っぷりが乱反射しながら、1時間のアクトをこの上なく鮮やかに彩っていた。

 アンコールで再びテナーが登場、“YES, SIR”“Train”で完全燃焼&大団円!……かと思いきや、なんとthe HIATUSのメンバーがステージに勢揃い。「細美くんが酒臭いんですけど!」とホリエ。そして細美の「なんか、もう1曲聴きたくない? 俺さ、どーうしても“ROCKSTEADY”が聴きたいの!」という煽りに、スタジオコースト割れんばかりの大歓声! お馴染みのカメラマン・橋本塁さんによる9人+オーディエンスの記念撮影の後、最後の“ROCKSTEADY”炸裂! 《僕らは進まなくちゃ 先を急がなくちゃ》というフレーズが、ロックの「その先」へのファンファーレのように高らかに響いた。最高のツアーのフィナーレを飾る、最高の一夜だった。(高橋智樹)


[SET LIST]

■the HIATUS
01 Curse Of Mine
02 Storm Racers
03 Ghost In The Rain
04 Lone Train Running
05 Antibiotic
06 堕天
07 The Flare
08 Little Odyssey
09 Silver Birch
10 ユニコーン
11 Centipede
12 紺碧の夜に
13 Twisted Maple Trees
14 Insomnia

■ストレイテナー
01 CLONE
02 クラッシュ
03 BIRTHDAY
04 DISCOGRAPHY
05 A SONG RUNS THROUGH WORLD
06 Toneless Twilight(新曲)
07 蝶の夢
08 DONKEY BOOGIE DODO
09 KILLER TUNE [Natural Born KIller Tune Mix]
10 Little Miss Weekend
11 Lightning
12 ネクサス
13 Melodic Storm

EC1 YES, SIR
EC2 Train
EC3 ROCKSTEADY
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