神聖かまってちゃん@赤坂BLITZ

神聖かまってちゃん@赤坂BLITZ
この2014年における「神聖かまってちゃん」とは何か。これまで7箇所をまわってきた「妖怪かまってちゃんネットウォッチツアー」のファイナルとなる今日のライヴで、4人はそれを雄弁に、どこまでも誇らしい形で満員の観客へと叩きつけた。音楽面での途方もない飛躍を果たし、彼らの最初の金字塔となった前作『楽しいね』から、より照準を絞り確たるポップを宿した最新作『英雄syndrome』へと2作続けて快作を作り上げた自信は、神聖かまってちゃんをこれほどまでに逞しくしたのだ。

神聖かまってちゃん@赤坂BLITZ
暗転したステージに“ようかい体操第一”が流れると、ジバニャンのお面を被ったmono(Key)、みさこ(Dr)、ちばぎん(B)、最後にの子(Vo・G)がようかい体操を踊りながら登場。大歓声に沸くフロアに、monoのエレドラに乗せたの子の「ようかいウォッチンチン」のコールが浴びせられると、すぐさま特大のレスポンスが返される(この演出、余程気に入っているようで、この後もところどころで披露されていた)。そうして始まった1曲目は、“自分らしく”だ。鋭角に痙攣するノー・ウェイヴ的なグルーヴに、じわじわと演奏が熱を帯びていく。曲間のオイ・コールなど、ファンの歓声が初っ端からバンドに力を与えているのだ。の子の「魔法をかけてやるよ」という宣言に続いた2曲目は『英雄syndrome』のオープニングを飾る“オルゴールの魔法”。力強いビートに一気にフロアが跳ね上がり、1曲目でぶち上がった歓喜が、早くもここでエクスプロードする。その着火の早さに、彼らの演奏力の成長ぶりを感じ驚かされた。ノイズ満載の破壊力抜群ハードコア・パンクな3曲目“レッツゴー武道館っ!”においても、どれだけフリーキーに暴れても決して破綻まではいかない演奏が素晴らしかった。この曲が終わるとの子から、「僕は日頃のお前らのストレスを聴きたいんだよ!もっとこい!」というシャウトが。みさこ&ちばぎんの阿吽の呼吸による音圧のコントロールが、正しくかまってちゃんのロックンロールに客のエネルギーを背負って飛ぶための羽根を授けていた“ねこラジ”は、今日の最初のハイライトと言っていいだろう。しかしもちろん、ただ格好良いままでは済まないのがかまってちゃん。の子「お前らがファイナルのテンションで来たら、こいつ(mono)のアナルに突っ込まれるお前らのテンション!」観客「…?」の子「うるさーい!そんぐらい馬鹿になれや!」というやりとりを繰り広げる。ただ、今日のの子のMCは、どれだけ破天荒な発言をしても、それが音楽を阻害するようなことはなかったと思う。グダグダなやりとりは最小限に、それ以上に伝えたいことを出来る限り真っ直ぐに言葉にしている印象だった。

神聖かまってちゃん@赤坂BLITZ
点滅しながら動き回る緑や青のレイザーライトとマッチしたド派手な音像をもって、ロックンロールで猛進していたライヴの流れを中盤で一変させたのは、の子とmonoのツイン・シンセによる“夜空の虫とどこまでも”。そこから、再び激しいギター・ノイズを撒き散らしながら聴き手の感傷を打つ“ぺんてる”、陽性に振り切れたエレ・ポップ“彼女は太陽のエンジェル”(曲前、の子はジーンズを脱いで海パン姿に)、スケールの大きいロック・バラード“背伸び”と、1曲ごとに大きく曲調を変えることで決してライヴをダレさせない。これもカラフルな『英雄syndrome』がもたらした成長のひとつだな、と思って感心していると直後、カウントダウン配信の閲覧数が伸びないためにライヴに来るだけでなく配信ももっと見てほしいと訴えるmonoに対し、「お客さんを責めてばかりじゃいけない。神聖かまってちゃん、2015年さらに成長するからよ!」と述べるの子に、かつてない頼もしさを覚える。さらにグッと来たのが、の子「お前らなんでここ(ステージ上)まで登ってこないんだよ!次こなかったらもう帰るぞ!」客「無理―!」の子「無理なことなんてないんだよ!無理だって思ってるだけ。無理だと思ってることを叩き壊す、それが俺にとって音楽だから」というやりとりから始まった“ロックンロールは鳴り止まないっ”の曲中で挟まれたアドリブ。滔々とこの場所で共に解放に至ることを求めるの子の切実さ、そして締めくくりの「ライヴに来てるんだから、溜まってるものを吐き出せ!…イエーイエー言ってやれ!」という、まるで江戸アケミ(じゃがたら)か、どんと(ボ・ガンボス/ローザ・ルクセンブルグ)かというような全身全霊のアジテートが、本当に感動的だった。

神聖かまってちゃん@赤坂BLITZ
神聖かまってちゃん@赤坂BLITZ
本編最後の曲は新アンセム“ズッ友”だ。曲の終わり、「ありがとうございます。これが最後の曲です」と締めようとするちばぎんに対し、「ハーッ!? じゃあ曲の事前に言えや! 金返せ!」とぶち切れつつも、すぐに「とりあえずまた来るからな……」と引き下がるの子の姿にも成長が感じられた。“グロい花”からリスタートしたアンコールで白眉だったのは、今日一番の引き締まったビートと、タブレット端末を手にしながらヴォコーダーで加工した声で歌うの子の姿がクールな雰囲気を醸していた“ロボットノ夜”。新曲がいちいち良い演奏で、またどれもフロアが盛り上がるのも素晴らしいし、ライヴの流れとしても、ニューモードの連打により「ここまで来たのか」と思うと次から次にさらに先まで届いていることを教えてくれるようでとても良かったと思う。アンコール3曲目は“学校に行きたくない”。溢れる衝動を漏れなく音に転化したような激烈ノイズの中、の子は何度となくフロア・ダイヴを敢行し、冷めやらぬ熱を隠そうとしない。そして、人と通り曲が終わるとの子はmonoと共に「いじめっこ! いじめっこ! いじめっこを殺せ!」とコールを始める。延々と続くその様子を窺っていたみさこが不服だったらしく「俺がエレカシの宮本さんだったらマイクぶん投げてるぞ!お前、いじめられたことないからな!」との子が毒づくと、みさこが「めっちゃいじめられてたよ!」と返し、結局は4人全員でコールし、一旦ステージを締めくくるが、フロアはまだ収まらない。一向に止まらないフロアからの同コールに招かれて、ダブル・アンコールに登場する4人。なぜかの子はパンツ一丁、monoは上裸だ。最後の最後は“あるてぃめっとレイザー!”が担った。の子の再びのアジりに乗って、次々とステージに上がっていく観客たち。みさこに代わってドラムをたたく者や、の子にキスする者など、滅茶苦茶である。しかし、暴動というよりは、イギー・ポップがやるような「ロックンロールの表現の一部」となっているのが、今の神聖かまってちゃんのライヴのモードを象徴しているようだった。そうさせているのはもちろん、観客の功績でもある。音楽に救われた男が愚直に、より良い音楽を作ることに腐心し、より良い音楽により音楽で他人を救おうとしている。そんな男の真剣さに真正面から向き合うことができるファン。両者が揃ったからこそ、神聖かまってちゃんは5年間でこれほどまでに頼もしい存在となれたのだ。一時のように社会と激しい摩擦を起こしているわけではない(もちろん、それもロック・バンドが果たすべき役割だ)。しかし、神聖かまってちゃんは今、自身の努力と熱意と野心によって、音楽の力で人を救おうとしている。救いの手を求める者の「英雄」であろうとしているのだ。神聖かまってちゃんは、ロック・バンドの鑑である。(長瀬昇)

■セットリスト

01.自分らしく
02.オルゴールの魔法
03.レッツゴー武道館っ!
04.ねこラジ
05.熱いハートがそうさせないよ
06.新宿駅
07.ゆーれいみマン
08.友達なんていらない死ね
09.夜空の虫とどこまでも
10.ぺんてる
11.彼女は太陽のエンジェル
12.背伸び
13.僕は頑張るよっ
14.ロックンロールは鳴り止まないっ
15.緑の長靴
16.ズッ友

(encore)
17.グロい花
18.ロボットノ夜
19.学校に行きたくない

(encore2)
20.あるてぃめっとレイザー!
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