ユニコーン@幕張メッセ 国際展示場1~3ホール

ユニコーン@幕張メッセ 国際展示場1~3ホール - all pics by 山本倫子(Michiko Yamamoto)all pics by 山本倫子(Michiko Yamamoto)
「今日は、俺たちが生まれ育った街に集まってくれてどうもありがとう! 俺たちはこの幕張で生まれ育って、よくその辺で遊んだよ、かくれんぼをして……」と幕張メッセに詰めかけたオーディエンスにロック・スター口調で語りかける山形出身・ABEDONこと阿部義晴。「すまんが、そこは海だ!」という奥田民生のツッコミにもめげずに「……魚を獲っていたんだ。そこからロシアに漂流して、しばらく5人バラバラになった……」「そして、ここ幕張でライヴができて、ほんと嬉しく思ってます!」と語るABEDONのテキトーなヒストリーまでもが最高のスパイスとして機能するくらい、幕張メッセの巨大な空間には徹頭徹尾、濃密な多幸感が満ちていた――。再始動後4作目となるフルアルバム『イーガジャケジョロ』を引っ提げて3月29日にスタートした、ユニコーンの全国ツアー「ユニコーンツアー2014“イーガジャケジョロ”」。6月5日まで全国25公演に及ぶホール公演に続き、6月28日・29日:幕張メッセ1〜3ホール、7月7日・8日:大阪城ホールのアリーナ追加公演4本がいよいよ開幕! 以前RO69で掲載したホール・ツアーのファイナル=6月5日:山形・やまぎんホール公演のレポート(http://ro69.jp/live/detail/103366)に続き、アリーナ初日となる6月28日・幕張メッセ公演の模様を以下にダイジェストしていくことにする。

ユニコーン@幕張メッセ 国際展示場1~3ホール
ユニコーン@幕張メッセ 国際展示場1~3ホール
この後にアリーナ3公演が控えているため、ここではセットリストの掲載は割愛させていただくが、シングル曲“Feel So Moon”やCMタイアップ曲“あなたが太陽”のみならず『イーガジャケジョロ』の楽曲を(「セブン&アイ限定盤」のみ収録の“はいYES!”も含め)全曲盛り込んでいたこの日のステージのポイントとしては大きく3つ。『イーガジャケジョロ』の14(+1)曲に対し、2009年の復活第1弾フルアルバム『シャンブル』からは“WAO!”“ひまわり”の2曲、2作目『Z』からは“頼みたいぜ”“オレンジジュース”“さらばビッチ”の3曲、“HELLO”も“SAMURAI 5”もなし、という選曲からもわかる通り、「再始動後」と一括りにできない『イーガジャケジョロ』独特の自由闊達なモード全開のライヴであったこと。「ベースなしスタイルのヴォーカリスト・EBIが『どこでもドア』ならぬ『EBIでもドア』から登場→“夢見た男”でフラフープ披露」「“俺のタクシー”で川西、タクシーのハリボテをまとって運転手に扮装」などホール・ツアーでも披露していた見せ場の数々に加え、巨大スクリーンでの映像効果や飛び道具的演出など、アリーナ公演ならではの要素をふんだんに盛り込み、序盤の民生の「3曲でもうピークが過ぎてる! この後は……普通ですんで(笑)」という言葉とは裏腹に最後まで決定的瞬間満載のステージだったこと。そして何より、“あなたが太陽”のようなあっけらかんとした陽性ナンバーも、“Feel So Moon”の凛としたサウンドスケープも、この会場がジャスト・サイズ!と思えるほどの途方もないスケール感とともに展開されていたことだ。

ユニコーン@幕張メッセ 国際展示場1~3ホール
ユニコーン@幕張メッセ 国際展示場1~3ホール
“KEEP ON ROCK'N ROLL”“We are All Right”といった楽曲で聴かせた、ポップ・ミュージックの良心そのもののようなABEDONのグッド・メロディ感。ある意味それと好対照を成すように、クールなエレポップ(?)ナンバー“トキメキーノ”、満場のコール&レスポンスを巻き起こした脱力ロックンロール・ナンバー“イーガジャケジョロ”などで軽快に炸裂する川西幸一の天邪鬼ポップ感。辣腕ギター・ソロからエレピ弾き語り&ギターレスの静謐な楽曲“それだけのこと”まで縦横無尽に咲き乱れた手島いさむのキャパシティ。プレスリーが憑依したようなロックンロール・ヴォーカリスト然とした歌い回しで“夢見た男”“お前BABY”などを歌い上げていくEBIの、キュートと呼びたいくらいの人懐っこい空気感。そして、「ほんとにたくさん来ていただいてありがとうございます。ほとんどの人が隣の『おもちゃショー』から来てると思うんですけど(笑)」と冗談めかして言いつつ、ギブソン・エクスプローラーを意気揚々と弾き倒し熱唱したルーズ&ヘヴィなメタル調ナンバー“ユトリDEATH”をはじめリード・ヴォーカリストとして/ギタリストとして力強くアンサンブルを牽引しつつ、今の5人の「実は誰もハンドルを握っていない高速ドライヴ」的な無軌道なバランス感を、会場の他の誰よりも楽しんでいるように見える奥田民生。「いい曲をやる」ことはデフォルト条件としてあっさりクリアしつつ、「バンドを楽しむ」というユニコーンの至上命題そのもののようなライヴ空間を、この巨大なスケールで実現してしまっていることに、改めて驚かされたし、同時に嬉しくなった。“WAO!”や“Feel So Moon”でメッセ一面に巻き起こったハンドウェーブはまさに、この日のはちきれんばかりの祝祭感そのものの光景だった。

ユニコーン@幕張メッセ 国際展示場1~3ホール
ユニコーン@幕張メッセ 国際展示場1~3ホール
ロック・ヴォーカルの熱量と滋味の結晶のような歌を聴かせる一方で、今年55歳になる川西にしきりに「コンド55号!」と呼びかけてみせたり、ホールの幅いっぱいまで長く花道が伸びた舞台に息を切らしながら「どうなんですか? 横に長いステージは……正直しんどい。なんでこんなに長いんでしょう?」「久々に、解散前を思い出しました。あの頃は体力あったなあと(笑)」などとメンバー相手にボヤいていたり、およそ「ロック・バンドのフロントマン」らしからぬゆったりまったりした空気感をMCで醸し出していた民生。だが、それも含めて唯一無二のエンタテインメントを描き出していくユニコーンのマジカルな磁場が幕張メッセを呑み込んだ、至上の一夜だった。すでに発表されている通り、8月31日には「ユニコーンツアー2014“イーガジャケジョロ”」幕張2公演の模様のWOWOW独占放送も決定。そして「ROCK IN JAPAN FES. 2014」最終日・8月10日のGRASS STAGEトリ前に出演!(高橋智樹)
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