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Adoに歌ってほしいボカロ曲とJ-POP曲を公募し生まれた「歌ってみた」アルバム。……いやあ、よくわかってる。まず、「この曲がAdoに合いそう」「Adoが歌うこの曲を聴きたい」という納得のリクエストをしたリスナー。次に企画を立ち上げ、通常のカバーではなく「歌ってみた」のアルバムに仕上げた制作陣。そしてもちろん、曲のカラーを損なうことなく情感豊かに変幻自在の歌唱で応えたAdo本人も。

“飾りじゃないのよ涙は”や、“罪と罰”といったJ-POPスタンダードから“ヴィラン”“神っぽいな”のような近年のボカロ曲までが並ぶことも、闇と狂気に染まる“愛して愛して愛して”とキュートに突き抜けた“可愛くてごめん”を同一人物が歌っていることも、本来は異様なはずなのにすんなり聴かせ切る。言葉の速射砲が放たれる“ブリキノダンス”から、“夜明けと蛍”でエモーションが頂点へ至るラストもたまらない。「歌ってみた」文化とそこから生まれた不世出のシンガーの存在を音楽史に刻む結晶だ。（風間大洋）

（『ROCKIN'ON JAPAN』2024年1月号より抜粋）

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