オーケストラの意味

ニール・ヤング『ストーリートーン』
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ALBUM
ニール・ヤング ストーリートーン
今年2枚目となるニール・ヤングの新作だが、DISC2のオーケストラ・アレンジが最大の話題となっている本作。楽曲のテーマは環境汚染をもたらしているシェール・ガスの掘削を批判するものや(電気)自動車をこよなく愛する心情を歌ったものなど現在のニールの関心事がランダムに取り上げられているが、断トツで傑出しているのはニールの恋心を歌ったオープナーの“プラスティック・フラワーズ”。出会いから図らずもお互いに恋してしまったその経緯を綴ったこの曲は本当にどきどきするというか、おっかなびっくりな展開ですごい! まさに恋愛の情景そのもので、十代の頃の初恋の一部始終のように瑞々しくかつたどたどしく恋の成り行きを綴っていて、69歳にしてこんな恋の歌を書いてみせること自体がすごすぎるのだ。特に彼女と気持ちが通じ合ってから、川辺に二人で降りて行って、彼女が川岸の砂を手ですくう時の描写が伝えてくる、「ぼく」の視線と恋心の初々しさは驚異的なまでにリアルな描写となっていて胸が苦しくなってくるくらいだ。それになぜオーケストラなのかという謎もこの曲を聴き直していくうちに氷解するわけで、ブリッジ部分で自分が彼女に贈ったプラスチックの造花を持って彼女が振り返った時、彼女は涙ぐんでいたという描写をよりよく聴かせたいというだけの話なのだ。ほかの曲はその成り行きというか、この曲に合わせるためにオーケストラを施されてしまっただけに過ぎないのだ。もちろん、ホーン・セクションを使って旅を語る“~シカゴ”もかっこいいが、恋のためにオーケストラまで使ってしまうニールが一番かっこいい。(高見展)
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