アメリカの媒介、アメリカの化身

フー・ファイターズ『ソニック・ハイウェイズ』
発売中
ALBUM
フー・ファイターズ ソニック・ハイウェイズ
前代未聞のコンセプトに驚かされると共に、そのコンセプトをさっ引いても十二分に素晴らしい、フー・ファイターズだからこその傑作だ。全米8都市で1曲ずつレコーディングされた全8曲。シカゴのブルース、ニューオーリンズのジャズ、ワシントンDCのハードコアと、各都市を象徴するジャンルを各曲のインスピレーションとし、また、各曲にはそれぞれご当地ゲストが参加している。例えばLAではイーグルスのジョー・ウォルシュが参加し、フーならではのヘヴィネスの中にカリフォルニアの哀愁を宿していて流石!と膝を打ってしまった。そう、本作で徹底されているのは、彼らにとっての音楽とは「環境と人」ありきだということだ。世界最大のロック・バンドの一角を占めつつも、フー・ファイターズは驚くほどエゴが薄く、代わりに他者への敬意、そして何よりも音楽そのものへの愛が計り知れないほど深いバンドだ。本作ではそんな彼らの特質が全ての面でプラスに働いている。本作は8都市とその街の人が彼らに「作らせた」アルバムであり、彼らは敬意と愛を持ってそこにひとつのアメリカを描き出している。各都市で影響を受けたからと言って、単純にブルース調の曲やカントリー調の曲が入っているアルバムではない。それらの要素は全て、フーのサウンドとして昇華されている。フー・ファイターズを媒介にしてアメリカン・ロックを巡るアルバムであり、同時にフー・ファイターズ自身がアメリカン・ロックの化身であることを証明する、そんな奇跡の一枚。(粉川しの)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする