サザンオールスターズの東京ドームを観る

サザンオールスターズの東京ドームを観る
既に、いろいろな所で報道されているが、3時間半ノンストップの大エンターテイメント・ショーだ。
このステージを観て思ったことを書きたい。
少しネタバレになるので、それでも良ければ読んでください。
新作「葡萄」発売後のツアーであり、タイトルも「おいしい葡萄の旅」となっているように、アルバム「葡萄」からの曲がたくさん演奏される。
「葡萄」からのシングル曲は、要所要所に配されてステージを盛り上げるが、多くの新曲はまとめて演奏される。その「葡萄」パートが、とても印象的だった。そこで感じたのは、「葡萄」の曲はこれまでのサザン・ナンバーとは違う、ということだ。
ジャパンの桑田佳祐インタビューでも、僕は話させてもらっているが、新作「葡萄」ではこれまでのサザンにはなかった言葉と世界観が歌われている。
そのことによって「葡萄」の曲は、これまでのサザンにはない新しさを持つことになった。
それが、新旧のナンバーがたくさん歌われるライブだと、より一層クリアになったと、僕は感じた。
「葡萄」の曲の詞は、明らかに「悲しみ」や「切なさ」の深さや重さが違うのだ。
より深く重い言葉が、これまでサザン・ナンバーとは違う形で、僕たちの心を揺さぶるのである。
そして、僕だけの印象かもしれないけど、「葡萄」の曲はどこか静かだとも思った。
次々と演奏される「葡萄」からの曲を聞きながら、キャリア37年のバンドが、こうした形で新しさを獲得する奇跡の場面に立ち合える幸せを感じた。
今回のツアーで「葡萄」からの曲をまとめて演奏するパートを設定したのは、とても良かったと思う。曲がそうして演奏されることを、望んでいた。
これまでの生への無邪気な信頼と肯定性が生み出すエネルギーに満ちたナンバー、「葡萄」の生の限界と、はかなさを見据えた深い悲しみと切なさに満ちたナンバー、その両輪で走るサザンは、今誰も到達できなかったポップの高みに向かって進んでいる。
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